ゲンロン 佐々木敦 批評再生塾 第3期#6『10年代の想像力』第一章冒頭を記述せよ──ポップカルチャー(2nd cycle)

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【課題】

『10年代の想像力』第一章冒頭を記述せよ

今から10年前の2007年、宇野常寛は『SFマガジン』誌上で『ゼロ年代の想像力』を連載開始しました。この連載は90年代以前のポップカルチャーに描かれた物語とゼロ年代以降のそれとを比較的に検討し、後者に日本の今日的な精神の表れと社会の様相を読み取る革新的な評論として、当初から高く評価されました。

この連載はのちに単行本としてまとめられ、現在ではゼロ年代を代表する批評書とされています。その冒頭部分は連載時からいくぶん加筆修正されてしまいましたが、しかしそれでも過去と現在を明快に弁別し、時代や社会について端的に説明した、本書全体の論理をわかりやすく説明するものとして読むことができます。

ということで、皆さんもその部分を書いてください。つまり以下のようなことです。

「2010年代のカルチャーの特徴をある作品(群)を例に挙げて、これを今日の時代意識や社会状況などと結びつけて語ってください」

これはつまり、文化と社会を相関的に語ってくださいということです。あなたがもし、2010年代に批評家としてデビューするつもりの人間であるなら、過去と現在を踏まえつつ最新の文化について語り、それが今の社会をどう描いているのか、さらには今の社会に何を示唆するのか、必ず、それを書けなくてはなりません。これは極めて実践的な課題だと思ってください。

ただし、以下の条件を満たしてください。

●宇野常寛と同じ議論の構成にする必要はない。
上記したように、宇野常寛は90年代以前とゼロ年代以降に切断線を入れることで、ゼロ年代以降を語ることを可能にしました。しかし皆さんはこのやり方にとらわれることはありません。あくまでもこの課題の目的は、10年代の想像力、すなわち10年代のポップカルチャーをもとに日本の時代的精神を表すことです。

そういう意味では別に、『ゼロ年代の想像力』を読んだことがなくてもかまいません。もちろん、宇野常寛と同じやり方でもかまいませんが。

しかしまた、あなたが書くのは批評です。だから批評ならではのダイナミックな論理の飛躍や、わくわくするような大胆な構成を見せてください。あなたが書くのはレビューや解説文ではありません。それを十分に理解してください。

●あなたの好きなポップカルチャーについて書く必要はない。
宮台真司が『ゼロ年代の想像力』に寄せた帯文は「若い書き手による、単なる「好きなもの擁護」を超えた、時代を切り拓くサブ・カルチャー批評を、僕らは長いあいだ待っていた。それが本書である。政治思想の最先端とも響きあう高度な内容は、その期待に応え得るはずだ。」というものでした。

宮台真司がここで言っているのはむしろ、若い書き手によるサブカルチャー批評は、単なる「好きなもの擁護」ばかりだということではないでしょうか。少なくとも僕は全くそうだと思っています。若い人でなくとも、今では多くの書き手が、批評のように見せかけた単なる絶賛文を書いています。そういった書き手の書いたものを読むたびに、退屈で飽き飽きしてしまいます。「今はこれが来てるんですよ」「自分はこれに賭けてるんですよ」そんなの知ったこっちゃありません。

もちろん、あなたの愛情を否定する必要はないのです。愛情は熱意、批評に異常なパワーを生み出す可能性があります。しかしそれをそのまま書いたって、せいぜい既にそれを好きな人の共感を得るだけではないでしょうか。その対象をあなたが好きであるにせよ、ないにせよ、今ここであなたが書かねばならないのは、ただ、なぜ今、この世界が、その文化を重視しなくてはならないのか、その一点だけです。

●多くの人に読まれることを考える。
上記にも関係しますが、今回の課題は、できるかぎり多くの人が読むことを意識してください。文化と社会をブリッジする批評を書くということは、必然的に、文化には知識がなく、社会にのみ興味がある人にも届けねばならないということです。皆さんはこれまでの課題で、果たしてそのように「読者は誰なのか」ということを意識してきたでしょうか?

たとえばアカデミックな論文調によって整理されると、あなたの文章をいかにも批評らしく見せかけてくれます。そういう文章は、場合によっては、大学のポップカルチャーを扱うような場所で評価してもらえるかもしれません。しかしもちろんですが、批評の領分はそんなところにはないのです。

また、この課題を読む人は、あなたの書こうとしているそのカルチャーについての前提知識を持っていないかもしれません。そういう人が読んでも、きちとその内容を理解し、なるほどと思えることを心がけてください。

少なくとも『ゼロ年代の想像力』は、そういったことができていました。だから多くの人に支持されたのです。あなたは批評再生塾の受講生なのだから、それができるべきです。そして2010年代の書き手として、それを乗り越えていくべきでしょう。

以上です。健闘を祈ります。

 

【イベント後記】

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さやわか Sayawaka

1974年生まれ。ライター、物語評論家、マンガ原作者。〈ゲンロン ひらめき☆マンガ教室〉主任講師。『クイック・ジャパン』『ユリイカ』などで執筆。『AERA』『ダヴィンチ』他で連載中。『月刊ビッグガンガン』に連載中の『キューティーミューティー』の原作を担当。著書に『僕たちのゲーム史』、『一〇年代文化論』(星海社新書)、『AKB商法とは何だったのか』(大洋図書)、『キャラの思考法』(青土社)がある。近著に『文学の読み方』(星海社新書)、『文学としてのドラゴンクエスト』(コア新書)など。

佐々木敦 Atsushi Sasaki

撮影=新津保建秀
1964年生まれ。批評家。HEADZ主宰。〈ゲンロン 佐々木敦 批評再生塾〉主任講師。『即興の解体/懐胎』(青土社)、『ex-music(L)』『同(R)』(アルテス・パブリッシング)、『「4分33秒」論』(Pヴァイン)、『シチュエーションズ』(文藝春秋)、『批評時空間』(新潮社)、『未知との遭遇』(筑摩書房)、『ニッポンの思想』、『ニッポンの音楽』(講談社現代新書)、『あなたは今、この文章を読んでいる。』(慶應義塾大学出版会)、『ゴダール原論』(新潮社)、『例外小説論』(朝日新聞出版)、『ニッポンの文学』(講談社現代新書)、など著書多数。近著に『未知との遭遇【完全版】』(星海社新書)、『筒井康隆入門』(星海社新書)、10/25発売『新しい小説のために』(講談社)がある。

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放送開始
2017/09/13 19:30
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2017/09/20 18:00
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2017/09/13 21:30
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