ゲンロン ひらめき☆マンガ教室 第2期#2ひらめきとは──ひらめき2

本授業のニコニコ生放送での中継はございません。

【ネーム課題】

自己紹介を漫画にしてください

第一回目の課題は、皆さんのことをよく知りたいこともあって、「自己紹介」をテーマにします。

ただしひとつだけ条件をつけさせてください。それは「読み物にすること」ということです。

ダメな例を先に挙げましょう。「私の名前はさやわかです。男です。おっさんです。北海道で生まれました。関西に10年くらい住んでから東京に引っ越してきました。家族構成は… 趣味は…」みたいな、ほとんど箇条書きみたいな説明文をそのままコマに入れて、とりとめなく絵を付けていって、説明することがなくなったら急に終わり、というものを描いてみても、漫画として全然読めない。面白くないですよね。これはダメです。

なら、自己紹介を漫画にするって、どういうことなんだろうか。ざっと考えてみたんですけど、これには3パターンくらいあると思います。

①作者自身の身近なことを描いたパターン
これはたとえば、清野とおるさんの『東京都北区赤羽』シリーズなんかがそうですよね。
冒頭に、「僕」こと漫画家の清野とおるは赤羽に住んでいると書いてあります。たしかに自己紹介です。だけど、ちゃんとギャグ漫画としてストーリーがある。具体的に何か描きたいテーマ(赤羽がとても奇妙な街であること)があって、それを話す形でストーリーが進行する。ただ事実を並べただけじゃない。そして、それを見ることで、やっぱり読者は清野さんがどんな人間なのか理解できる。つまり自己紹介として読める。

②作者自身の経験と思われることを描いたパターン
これはたとえば、さくらももこさんの『ちびまる子ちゃん』なんかがそうですよね。
冒頭には「わたしは小学校3年生の時のさくらももこです」と書いてある。たしかに自己紹介です。だけど、作品の中心になっているのは子供時代の「あるある」みたいなことで、作者の経歴を羅列しているわけではない。だからまる子という主人公も、必ずしも作者自身ではなく、独立したキャラクターとして描かれている。アニメだとナレーションも男性ですよね。

③作者自身が漫画のことを語るパターン
漫画家が、漫画家という職業や漫画という表現そのものをテーマにして描く漫画。「漫画家漫画」なんていう言い方をする場合もありますよね。大井昌和さんがひらめき☆マンガ教室のために描き下ろしてくださった紹介漫画は、これに近いと思います。

描いてある内容は、たしかにひらめき☆マンガ教室の紹介です。でも、読者はこれを読むことで、大井さんという作家が、どんな趣味の人か、また漫画についてどういう考え方を持っているのか、とかが理解できますよね。なら、あなたは漫画についてどんな考えを持っているから、ひらめき☆マンガ教室を受講しようとしているのでしょうか?この課題で、それを漫画にすることはできるかもしれません。

どうでしょうか?
本当はこれ以外にも「作者の思想が強く反映された登場人物の出てくるマンガ」とかもありますけど、とりあえずこのへんで。
さて上記に挙げた3つの例を見ながら、「要するにこういうことをやればいいのかな」とカンを働かせて、描いてみてください。それぞれの作品で、作者が、どうやってその作品を作っているのか、よく考えて描いてみてください。

★ヒント1:この課題は要するに、たとえ作者本人が登場するにしてもそれが独立したキャラクターとして描かれていて、またストーリーというほどでなくても筋書きのある作品にすると、高得点になります。
★ヒント2:やっていただきたいのは、上記の3作品をそのままマネすることではありません。たとえば子供時代を描けというわけではないです。自分の職業について描いたっていい。生活でのこだわりについて描いてもいい。作者自身が登場しなくて別の誰かに変えちゃってもいい。
★ヒント3:絵柄も、絵の上手さも関係ないです。そもそも、ここで最初に提出するのはネームなので、下描き以下のクオリティでいいです。「ネームってのがどんなものかわからない」というひとは、コマ割りと、構図と、誰がどんなポーズと表情をしてるか分かる程度の絵を描いてみましょう。

(さやわか)

 

【イベント後記】

 

当日のtweetのまとめはこちら

togetter

 

 

school_logo_large2

ゲンロン ひらめき☆マンガ教室

超・ひらめき☆マンガ家育成サイト

ゲンロン ひらめき☆マンガ教室Facebookページ

西島大介 Daisuke Nishijima

1974年東京生まれ。〈ゲンロン ひらめき☆マンガ教室〉ひらめき☆プロデューサー。2004年に書き下ろし長編コミック『凹村戦争』(早川書房)で漫画家デビュー。同作は平成16年度第8回文化庁メディア芸術祭審査員推薦作品となり、またこの年に星雲賞アート部門を受賞。代表作に『世界の終わりの魔法使い』(河出書房新社)『すべてがちょっとずつ優しい世界』(講談社)など。IKKI休刊により未完となった『ディエンビエンフー』が2017年1月より「月刊アクション」(双葉社)に移籍、『ディエンビエンフー TRUE END』として連載再開。イラストレーター、アートディレクターとして装幀画やCDジャケットを数多く手掛け、「DJ まほうつかい」名義での音楽活動やアーティストとしての個展も開催する。

さやわか Sayawaka

1974年生まれ。ライター、物語評論家、マンガ原作者。〈ゲンロン ひらめき☆マンガ教室〉主任講師。著書に『僕たちのゲーム史』、『文学の読み方』(いずれも星海社新書)、『キャラの思考法』、『世界を物語として生きるために』(いずれも青土社)、『名探偵コナンと平成』(コア新書)、『ゲーム雑誌ガイドブック』(三才ブックス)など。編著に『マンガ家になる!』(ゲンロン、西島大介との共編)、マンガ原作に『キューティーミューティー』、『永守くんが一途すぎて困る。』(いずれもLINEコミックス、作画・ふみふみこ)がある。「コミックブリッジ」で『ヘルマンさんかく語りき』(作画:倉田三ノ路)を連載中。