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〈ゲンロン ひらめき☆マンガ教室〉の講義を生中継します。
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「講評」部分については、タイムシフトを公開しません。あらかじめご了承ください。
【ネーム課題】
「男性」というテーマでの回だということで、直球でこの課題にさせていただきました。
別に女性を出すなというわけではありません。女性を絡めた男たちといったアプローチでも良いですし、もちろん徹底して男しか出てこないドラマでもOK。
ただし、あくまでも「男」という単体ではなく「男たち」という複数形。
その関係性は、友だちでもライバルでも恋人同士でも、もう何でもOK。組み合わせも可能性も、無限大です。そんな中から、それぞれの作者さんが面白いと思って、その作者さんならではの視点で描いた、そんなマンガを期待しております。(田亀源五郎)
【実作課題】
今回「物語」というテーマを頂き、改めて漫画家としての僕にとって「物語」とはなんだろうと考えてみました。そもそも、漫画家が漫画を描きたいと思うきっかけ、漫画にしたいと思うものってなんでしょう?
最初期には、他の作家の作品を読んだり観たりして「自分もこういうのが描きたい!」という素朴な真似心から湧いてくる漠然としたものかもしれませんが、次の段階ではきっと、自分の胸の中にある、ある種の、えも言われぬ感情、表現欲求、これを漫画にしたいと思うものではないでしょうか。
しかし、漫画って本当に手間のかかる面倒な作業です。そこまでして表現したい感情ってどんなものでしょう?
それは、両親にはもちろん、友人にすら、言葉で話してもなかなか伝わらないような、ややこしい感情ではないでしょうか。数字で例えると、「1でもなく2でもなく、1.2でも1.3でもない、1.2573…」みたいな。
これを中途半端に話すと、「ああ、1.3でしょ」とか「1.2の話ね、わかるわかる」と軽く見積もられて、いい加減に同情されてしまったり、批判されてしまったり…。
「そうじゃねえんだよ。そういうんじゃねえんだよ」
余計に鬱屈がたまってしまったりします。
そういうややこしい感情を、わかりやすく、誤解少なく、より多くの人に共有してもらえるようにする非常に有効な「装置」、これが【物語】=ストーリーなんじゃないかと思うんです。
それなりにややこしい感情でも、世代が近かったり、生育環境が近かったりすると、ある一定数の人には、そのまま吐きだしても「わかる」と言ってもらえるかもしれません。
しかしここはもう少し欲張って…というかむしろ、読まされる多くの読み手や、それを届ける出版社などのことを考えて、ということでもいいのですが、「メジャー」を意識して、作品にしてみましょう、という課題です。
物語化(=メジャー化)した、えも言われぬ個人的な感情、これをとりあえず「悲劇」と名付けてみました。
しかし、悲しい話でなくても構いません。読者の胸にせまるものがあれば、最終的にハッピーエンドでもいいですし、怒りや虚しさ、寂しさなどを扱っていてもいいのです。
それこそ、泣いたらいいのか笑ったらいいのかわからないような複雑な感情こそ、味わってみたい気もします。
ただ、「こういう話、泣けるよね~」というパターンで、心にもないものを手先で器用にこねてそれっぽく作ってほしくはないんですよね。そういう意味で、【「この夏一番の泣ける話」ではなく】というしばりをつけました。
でも、ほんとに涙が止まらないような短編を作ってきていただいても全然構いませんよ。作家自身の内部から出てきたものだという実感さえ伴えば、むしろそれが最高かもしれません。
メジャー(普遍)化を考えるとき、二つのことを考えると、上手くいくんじゃないかと思います。
ひとつは、違う世代や、違う性別の人の心にも届けられるための装置(演出)
もう一つは、オタク、漫画読みなど、コアな漫画ファンでなくても受け入れられる舞台設定
僕の仕事の中では、「掃除当番」「屋根の上の魔女」あたりの短編集が、参考になるかもしれません。
受講者全員が、プロ漫画家を目指すわけではないと聞いていますが、今回は一つの実験、経験として、そんな「ストーリー漫画」を作ってみましょう。
16ページという制限の中では、なかなか難しいと思いますが、どうぞよろしくお願い致します!(武富健治)
【イベント後記】
当日のtweetのまとめはこちら!
田亀源五郎 Gengoroh Tagame
マンガ家、ゲイ・エロティック・アーティスト。
1964年生まれ。多摩美術大学卒業後、アート・ディレクターをしつつ、1986年からゲイ雑誌「さぶ」にマンガ・イラストレーション・小説等を発表。1994年から専業作家となり、ゲイ雑誌「G-men」の企画・創刊にも協力。同誌のほか、「バディ」「薔薇族」等のゲイ雑誌や、ボーイズラブ誌、レディースコミック誌などにも作品を発表。2014年9月から「月刊アクション」にて一般向けマンガ『弟の夫』連載開始。同作にて第20回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞受賞。代表作に『嬲り者』『銀の華』『PRIDE』『君よ知るや南の獄』『外道の家』『ウィルトゥース』『エンドレス・ゲーム』など。英語、フランス語、スペイン語、イタリア語への翻訳出版あり。
編著書に『日本のゲイ・エロティック・アート』(vol.1、vol.2)。また、パリ、ニューヨーク、ベルリンなど日本国外をメインに多数の個展やグループ展に参加している。
西島大介 Daisuke Nishijima
1974年東京生まれ。〈ゲンロン ひらめき☆マンガ教室〉ひらめき☆プロデューサー。2004年に書き下ろし長編コミック『凹村戦争』(早川書房)で漫画家デビュー。同作は平成16年度第8回文化庁メディア芸術祭審査員推薦作品となり、またこの年に星雲賞アート部門を受賞。代表作に『世界の終わりの魔法使い』(河出書房新社)『すべてがちょっとずつ優しい世界』(講談社)など。IKKI休刊により未完となった『ディエンビエンフー』が2017年1月より「月刊アクション」(双葉社)に移籍、『ディエンビエンフー TRUE END』として連載再開。イラストレーター、アートディレクターとして装幀画やCDジャケットを数多く手掛け、「DJ まほうつかい」名義での音楽活動やアーティストとしての個展も開催する。
さやわか Sayawaka
1974年生まれ。ライター、物語評論家、マンガ原作者。〈ゲンロン ひらめき☆マンガ教室〉主任講師。著書に『僕たちのゲーム史』、『文学の読み方』(いずれも星海社新書)、『キャラの思考法』、『世界を物語として生きるために』(いずれも青土社)、『名探偵コナンと平成』(コア新書)、『ゲーム雑誌ガイドブック』(三才ブックス)など。編著に『マンガ家になる!』(ゲンロン、西島大介との共編)、マンガ原作に『キューティーミューティー』、『永守くんが一途すぎて困る。』(いずれもLINEコミックス、作画・ふみふみこ)がある。「コミックブリッジ」で『ヘルマンさんかく語りき』(作画:倉田三ノ路)を連載中。