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[実作講評]一般無料
〈ゲンロン 大森望 SF創作講座〉の講評会の模様を無料生中継します。放送開始は22:00を予定しています。
タイムシフトは公開しませんので、あらかじめご了承ください。
【実作課題】
現在の娯楽小説は、いわゆるキャラ文芸のようにキャラクターが強い傾向を持ちます。なので、商業的に考えると、キャラクターを中心として進むタイプの物語を書けるにこしたことはありません。
キャラクターを二人以上作って、その人間(?)関係で回る物語を作って下さい。
SFの講座なので、キャラクターがSFらしいギミックを背負っているようにしてください。ロボットと人間の関係でも、異星人と人間でも、異星人同士でも、免疫抗体とウイルスの関係でも、惑星と衛星の関係でもかまいません。あるいは、キャラクターの関係がSFらしいギミックになっているものでもありません。接触するとエネルギーを発して消滅する恋人同士でも、タイムスリップして出会うとタイムパラドックスが起こる本人同士でも、なんでもよいです。
だいじなのは、「そのキャラクターの関係性に魅力を持たせて、読み手に好きになってもらうこと」です。キャラクターは、個別に立てるだけでなく、キャラクター同士の関係に引きつけることができると、より可読性が上がります。ここがしっかり魅力的にできていると、物語の構造が一気に安定するのです。
オーソドックスな技術だからこそ、出来不出来の差が出るところでもあります。しっかりと身につけておきましょう。
アピール文には、「どのようなキャラクター関係」であり、「その関係がどのように読者を楽しませて」「その関係がSFとしてどのような見るべき点を持つか」を書いてください。
今回は構造の勝負なので、梗概よりもアピール文の限られた情報で面白さを打ち出せると強いと思います。頭をひねってください。
(長谷敏司)
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【梗概課題】
第2期では「場面(空間)」を制約したので、今度は時間にします。
作品内で経過する時間をあらかじめ設定してから、その中で展開するプロットを作り、梗概としていただきます。
時間は、1日でもよいし、百億年でもよいし、(昨年の八島游舷さんのように)0.5秒でもよいです。11:00から13:00、のように時刻で表記してもよいです。
これを制約ととるか、アイディアの源泉ととるか、いずれにせよこの条件ならではの面白さを追求してください。
お話は、その時間経過に沿って進行すること。ループものは不可ではないですが、ひどく不利になると思っておいてください。
「時間」にトリックを入れるのはありです。1日が地球の100年分くらいある惑星とか。それで面白くなるのであれば。
梗概の冒頭には設定した時間を明示すること。
講義では課題からは少し離れて、野尻抱介著「大風呂敷と蜘蛛の糸」(『沈黙のフライバイ』ハヤカワ文庫JA所収)の構成分析を行います。可能ならば読んでおいてください。
作中の時間の流れ、空間の移動、アイディアや主題など作品の核となる要素、そのすべてを具体物の上に見事に配置・構成した、一個のオブジェのような逸品です。
(飛浩隆)
飛浩隆 Hirotaka Tobi
塩澤快浩(早川書房) Yoshihiro Shiozawa
編集者。1968年、長野県生まれ。1991年、早川書房に入社。96年、第8代〈SFマガジン〉編集長に就任(09年に退任後、13年に再任)。02年、《ハヤカワSFシリーズ Jコレクション》を創刊。野尻抱介『太陽の簒奪者』、飛浩隆『グラン・ヴァカンス』などを送り出し、日本SFの新たな中核をつくりだす。翌03年には、ハヤカワ文庫JAの新レーベル「次世代型作家のリアル・フィクション」を立ち上げ、冲方丁『マルドゥック・スクランブル』を3カ月連続刊行。07年には円城塔と伊藤計劃のデビュー単行本を手がけた。12年にはハヤカワSFコンテストを創設、選考委員もつとめている。
大森望 Nozomi Ohmori
1961年高知生まれ。書評家・SF翻訳家・SFアンソロジスト。〈ゲンロン 大森望 SF創作講座〉主任講師。著書に『21世紀SF1000』、『新編・SF翻訳講座』、《文学賞メッタ斬り!》シリーズ(豊崎由美と共著)、《読むのが怖い!》シリーズ(北上次郎と共著)など。アンソロジーに《NOVA 書き下ろし日本SFコレクション》、《不思議の扉》の各シリーズのほか、『星雲賞SF短編傑作選 てのひらの宇宙』など。訳書にコニー・ウィリス『ブラックアウト』『オール・クリア』など多数。2013年には『NOVA』が第34回日本SF大賞特別賞を受賞。