現音カフェ#2現代音楽のポピュラリティ

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【登壇者より】

 
▼ 川島素晴さんからのメッセージ

ロンドンを拠点に国際的に活躍する作曲家、藤倉大さん。世界中のソリストとインターネット経由で密なコラボレーションを重ねて引き出した独創的な音響アイデアを、卓抜な書法でまとめあげることにより得られる音楽は、揺るぎない構築とともに自在なしなやかさも兼ね備え、国籍を問わず演奏家や聴衆を虜にしてきました。

作品個展、フェスティバルのキュレーション、オペラの日本初演と、この秋は日本でも藤倉さんの音楽を聴く機会が多いですが、そのための東京滞在の僅かな間隙をぬって登壇をお願いしました。

作曲家としての実力はもとより、マスタリングまで自前でこなす幅広いスキルとこだわり、セルフプロモーションの積極的展開など、現代人ならではの行動力がその国際的活動を支えており、そのあたりの「現代において作曲家として活動すること」の諸問題についてもお話できればと思います。

 
▼ 木石岳さんからのメッセージ

音楽産業の衰退や、音楽コンテンツの変遷、といった話は、よく話されるテーマだと思います。
でも、現代音楽のポピュラリティ、っていうのはちょっと面白いですね。
​なぜなら現代音楽というフィールドでこういったことを聞くことはあまりないから。

​そもそもポピュラリティを獲得した音楽というのは、ポピュラー音楽とか、大衆音楽とか、そういった呼び方をされて他とは区別してきて、ぼくたちはそういった差別化によって安心してきたという節がある。
​かくいうぼくも、「現代音楽はムズカシイ」っていう今も昔も変わらぬイメージを逆手にとって『やさしい現代音楽の作曲法』という皮肉めいた本を書いたわけで、現代音楽の閉鎖的なイメージには恩恵を受けています。

​もしくはもっと自由無垢に「現代音楽と大衆音楽の区別なんかない!」と言ってみたところで、実際問題違いはあるんだし、客層ははっきりと別れている。現代音楽のイベントに行くと客層はいつも同じで、気づいたらお客さん同士や、客と出演者が顔見知りになっちゃったりする。

​現代音楽の作曲家に対して「それって、売れるんですか?」とか「何人集客できたんですか?」って言葉は愚問かタブーか、ともかく「らしくない」質問に思うわけです。
​でも、もちろん現場はそうではない。どこそこの劇場の集客がどうで、とか、録音の費用がどうで、という切実な話題は、現代音楽もポピュラー音楽も同じはず。

​しかしながらゲストの藤倉大さんは『ボンクリ・フェス』を「赤ちゃんからシニアまで」と銘打って大盛況だったし、今度日本初演されるオペラはその題材を「読まれない古典」なんかではなく、『SFマガジン』のオールタイム・ベストに選出されるレムの『ソラリス』から選んでいる。だから、現代音楽のポピュラリティっていう意味では、非常にしっくりくる数少ないアーティストだと思います。
​でも、ぼくの個人的な感想は、藤倉さん自身は「現代音楽」という枠組みなんていうちっぽけなことを考えてすらいないほど華麗にしたたかに創作をしておられる方のように思う。

そして、前回に引き続き登壇してくださる川島素晴さんは、その逆に、非常にしっかりと現代音楽の枠組みというものを考えていて、そしてそれとどう向き合ったり、受け継いだり、もしくはそこから逃れたり、または叩き潰したり破壊したり、ということを考えておられる方なんじゃないかな、と思います。

​「現代音楽のポピュラリティ」っていうパラドキシカルなお題目でもって現代音楽や、ひいては音楽産業全体の現状について語り合うことになりそうな今回の現音カフェ、個人的にも大興奮です。

​二人の天才に混ざって、ぼくも観覧者/視聴者の目線から楽しく突っ込んでいくことができればと思います。

 

【イベント概要】

業界内外で話題を呼んだ現代音楽イベントの第2弾を開催! 今回は作曲家の川島素晴さん、『やさしい現代音楽の作曲法』編著者で音楽ユニット・macaroom代表の木石岳さんにくわえ、ロンドンを拠点に活動する作曲家・藤倉大さんをお招きします。

藤倉さんは2009年に芥川作曲賞、2017年には「ヴェネツィア・ビエンナーレ」音楽部門の銀獅子賞を受賞するなど、いまもっとも注目をあつめる作曲家のひとり。自作曲がピエール・ブーレーズ、ジョナサン・ノットといった世界的な音楽家に演奏され、現代音楽の世界で高く評価をあつめるほか、坂本龍一やデヴィッド・シルビアンといった他ジャンルの音楽家とのコラボレーションを行い、現代音楽の枠組をおおきく超えて精力的に活動しています。

イベント開催は、スタニスワフ・レムの同名小説を題材とした藤倉さん作曲のオペラ『ソラリス』の日本初演前日! 現代音楽の最前線について、お三方に存分にお話しいただきます。

 

【イベント後記】

 

当日のtweetのまとめはこちら

togetter

川島素晴 Motoharu Kawashima

東京芸術大学、同大学院修了。1992年秋吉台国際作曲賞、1996年ダルムシュタット・クラーニヒシュタイン音楽賞、1997年芥川作曲賞、2009年中島健蔵音楽賞、2017年一柳慧コンテンポラリー賞等を受賞。いずみシンフォニエッタ大阪プログラムアドバイザー等、現代音楽の企画・解説に数多く携わり、2016年9月には北海道テレビ「タモリ倶楽部」の現代音楽特集にて解説者として登壇。指揮、ピアノ、打楽器、声等、自作や現代音楽作品を中心に、様々な演奏活動にも携わっている。日本作曲家協議会理事。国立音楽大学准教授。

木石岳 Gaku Kiishi

文筆家、作曲家。文学・中国武術・先端科学をドッキングするエレクトロ・ポップユニット「macaroom」代表。歌詞の音響的機能を独自に体系化し、ポップ作品として発表している。慣例化されたジョン・ケージ演奏に疑問を呈する試み『cage out』のリリースなど、現代音楽に関連した取り組みも行なっている。

藤倉大 Dai Fujikura

1977年大阪に生まれ、15歳で渡英。E.ロックスバラ、D.ランズウィック、J.ベンジャミンに師事。これまでに数々の作曲賞を受賞。ザルツブルグ音楽祭、ルツェルン音楽祭、BBCプロムス、バンベルク響、シカゴ響、アンサンブル・アンテルコンタンポラン、シモン・ボリバル響等から委嘱され、国際的な共同委嘱は多数。14年4月、名古屋フィルハーモニー交響楽団のコンポーザー・イン・レジデンスに就任。15年3月、シャンゼリゼ劇場、ローザンヌ歌劇場、リール歌劇場の共同委嘱によるオペラ「ソラリス」がシャンゼリゼ劇場にて世界初演された。16年4月、東京混声合唱団レデント・アーティストに就任。17年4月、革新的な作曲家に贈られる伊のヴェネツィア・ビエンナーレ音楽部門銀獅子賞を受賞した。17年及び18年に東京芸術劇場で開催の音楽フェス「ボンクリ」ではアーティスティック・ディレクターを務めている。その他18年の日本での主な活動は、白寿ホールでの「藤倉大 個展」東京芸術劇場でのオペラ「ソラリス」全幕(演奏会形式・日本初演)を予定。Minabel Recordsを主宰。

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