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[実作講評]一般無料
〈ゲンロン 大森望 SF創作講座〉の講評会の模様を無料生中継します。放送開始は22:00を予定しています。
タイムシフトは公開しませんので、あらかじめご了承ください。
【実作課題】
小学校の夏休みの課題といえば、かつては「アサガオの観察日記」が定番でした。それで思い出したのですが、もう40年ぐらい前、中学校の技術家庭科の授業でキク(挿し芽)の福助作りに挑戦したことがあります。隣のクラスのS君の鉢だけ、明らかに葉の形が異なるものが伸びてきて、どんなに世話をしても最後まで花をつけず、ひとり涙目になっていたのが忘れられません——あれはいったい、何だったのだろう?
閑話休題。今回の課題は「何かを育てる物語」です。
火星でジャガイモを育てる小説がありましたが、育てる対象は生物でも無生物でもかまいません。人工知能や組織的集団はもちろん、神や宇宙、言語化できないウンタラカンタラでも何でもござれです(育てる主体も同様)。ただし「何を育てるか/誰が育てるか」のアイデアだけに自足して、設計図通りに「作る」だけ、あるいは完全放置して「なりゆく」さまを観察するだけでは物足りない。
皆さんは「ゲンロンSF創作講座」の受講生として、「育てる/育てられる」関係の非対称性に自覚的であろうと思われます。そうした関係のせめぎ合いにも目を配りながら、「××育成シミュレーション」のテンプレに収まらない、育てる主体とその対象の間に生じるダイナミックな相互作用のドラマを描いてくれることを望みます。
(法月綸太郎)
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【梗概課題】
シーンの繋ぎは、難しくもやりがいのある問題をたくさん抱えています。
場面転換、あるいは「一方その頃」的な話の切り替え、語り手の変更による物語の見え方の大転換、新しいキャラクターや場面の登場による世界の拡張。あるいは、事件の発生によるショックシーン。
プロですら、雑につないでしまったり、ベストな繋ぎがわからず妥協して進めることがよくあります。
けれど、このシーンの繋ぎにうまくドラマや驚きを載せることができると、作品の見え方のレベルが一回り二回り変わってきます。
シーン頭は、読者さんがシーンを理解したいというモティベーションを持って読んでくれる、ナチュラルに目と興味がリセットされるタイミングだからです。
皆さんは、シーンの切れ目を意識して、SFを作ってみてください。
(長谷敏司)
長谷敏司 Satoshi Hase
1974年、大阪生まれ。2001年、第6回スニーカー大賞金賞を受賞した『戦略拠点32098 楽園』(KADOKAWA)でデビューしたのち、ライトノベルからSFに活動の場を広げる。2015年、『My Humanity』(早川書房)で第35回日本SF大賞を受賞。その他の著作に『円環少女』シリーズ(KADOKAWA)、『あなたのための物語』(早川書房)、『BEATLESS』(KADOKAWA)、『メタルギアソリッド スネークイーター』(KADOKAWA)、『ストライクフォール』シリーズ(小学館)など。最新刊『プロトコル・オブ・ヒューマニティ』(早川書房)が22年10月18日に発売した。
塩澤快浩(早川書房) Yoshihiro Shiozawa
編集者。1968年、長野県生まれ。1991年、早川書房に入社。96年、第8代〈SFマガジン〉編集長に就任(09年に退任後、13年に再任)。02年、《ハヤカワSFシリーズ Jコレクション》を創刊。野尻抱介『太陽の簒奪者』、飛浩隆『グラン・ヴァカンス』などを送り出し、日本SFの新たな中核をつくりだす。翌03年には、ハヤカワ文庫JAの新レーベル「次世代型作家のリアル・フィクション」を立ち上げ、冲方丁『マルドゥック・スクランブル』を3カ月連続刊行。07年には円城塔と伊藤計劃のデビュー単行本を手がけた。12年にはハヤカワSFコンテストを創設、選考委員もつとめている。
大森望 Nozomi Ohmori
1961年高知生まれ。書評家・SF翻訳家・SFアンソロジスト。〈ゲンロン 大森望 SF創作講座〉主任講師。著書に『21世紀SF1000』、『新編・SF翻訳講座』、《文学賞メッタ斬り!》シリーズ(豊崎由美と共著)、《読むのが怖い!》シリーズ(北上次郎と共著)など。アンソロジーに《NOVA 書き下ろし日本SFコレクション》、《不思議の扉》の各シリーズのほか、『星雲賞SF短編傑作選 てのひらの宇宙』など。訳書にコニー・ウィリス『ブラックアウト』『オール・クリア』など多数。2013年には『NOVA』が第34回日本SF大賞特別賞を受賞。