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[実作講評]一般無料
〈ゲンロン 大森望 SF創作講座〉の講評会の模様を無料生中継します。放送開始は22:00を予定しています。
タイムシフトは公開しませんので、あらかじめご了承ください。
【実作課題】
以前、僕がSF創作講座を受講したとして、どんなテーマのSFを書くだろうか、と考えたことがあります。
真っ先に思い浮かんだのは「クイズSF」です(ちなみに僕は「クイズ」について人並みの知識しかありません)。
なぜ「クイズSF」かといえば単純で、クイズが得意なゲンロンの徳久君に「取材」できるからです。「クイズSF」と言われても、漫画『国民クイズ』くらいしか思い浮かばないので、それなりに目新しいテーマでしょう。その道のプロから直接話を聞くこともできるし、クイズについて体系的に学べる文献を教えてもらえるかもしれません。クイズは文章との相性もいいし、教養も深まります。何より、どうやったらあんなタイミングで早押しボタンが押せるのか、とても気になります(何らかの技術が介在しているはずです)。
そう思って、徳久君に「これまでの受講生でクイズをテーマにした人はいましたか?」と聞いたところ「一人もいません」と言われました。もったいないですね(もったいないので、「クイズ」テーマの作品は僕が書く予定です)。
さて、今回はあなたにとっての「クイズSF」を書いてください。ただし、いくつか条件があります。
1、現時点でそのジャンルについて人並み以上の知識を持って「いない」こと。
2、「取材」をすること。「取材」と言っても、必ずしも誰かに直接話を聞いたり、どこかへ足を運ばなければいけないわけではありません。たとえば「複素数」を題材にするために、本やネットで調べる、というだけでも構いません。
興味のあるテーマで検索して、上位に出てきた本を読むのもいいでしょうし、最近連絡していなかった昔の友人から話を聞くのもいいでしょう(どちらも僕がよくやることです)。これを機に苦手な天体物理学の勉強をするのもいいし、新聞からネタを探すのもいいでしょう。僕はもともと理系で、世界史の知識はほとんどありませんでしたが、作品のネタを探すために山川の問題集を買い、一から勉強したりしました(とても楽しかったです)。
思いついた題材をどのように「SF」に調理するのかはお任せしますが、今回は(可能な限り)広義のSFであればいいこととします。
受講生の方々はタイトなスケジュールで時間も限られているとは思いますが、これまで知らなかったことを知るいい機会だと割り切って、面白い作品を着想してください。
また、梗概の末尾には必ず、どのようにして取材をしたか(あるいはする予定か)を書いてください。特定の本やウェブサイトを参考にした場合は、参考文献という形で明記してください(参考文献一覧の書き方がわからない人は、自分で調べてみてください)。
(小川哲)
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【梗概課題】
ファースト・コンタクトは、SFが生んだ古典的なテーマの一つです。その最も初期から、最近まで常に書かれてきたテーマです。そして多くの傑作を生んできたテーマです。もはや書き尽くされてしまったテーマと思われがちですが、たとえばテッド・チャンの「あなたの人生の物語」のように新たな可能性を生むことが出来る筈です。あるいは「最初の接触」ということから、たとえば大航海時代に起きた様々な悲劇も含めて、別の物語も可能です。もちろんこれまで書かれてきたこのテーマの作品を全て読む必要はありません。事実、それはほぼ不可能なことだと思います。あなたがこの課題に接して何を思ったか、それが重要なことです。このきわめてSF的な課題は、若干ハードルが高いかもしれません。色々考えてみましたが、逆に、この課題が皆さんによって新たな側面を見せてくれるのではないか、そう考えました。楽しみにしています。
(鏡明)
鏡明 Akira Kagami
1948年山形県に生まれる。早稲田大学第一文学部卒。1971年電通入社。広告ディレクターとして様々なCMを送り出すため世界各地を飛び回る会社員生活の傍ら、評論家、作家、翻訳家として精力的に活躍。世界三大広告賞と呼ばれる「カンヌライオン」「クリオ」「ワン・ショウ」を始め、受賞多数。2012年、アジア太平洋広告祭で「ロータス・レジェンド」として表彰、2013年には第33回東京広告協会白川忍賞を受賞している。
著書─『不死を狩る者』『不確定世界の探偵物語』『二十世紀から出てきたところだけれども、なんだか似たような気分』。
訳書─A・メリット『蜃気楼の戦士』、ロバート・E・ハワード『風雲児コナン』、ピーター・S・ビーグル『最後のユニコーン』、『ドアーズ詩集』など。
塩澤快浩(早川書房) Yoshihiro Shiozawa
編集者。1968年、長野県生まれ。1991年、早川書房に入社。96年、第8代〈SFマガジン〉編集長に就任(09年に退任後、13年に再任)。02年、《ハヤカワSFシリーズ Jコレクション》を創刊。野尻抱介『太陽の簒奪者』、飛浩隆『グラン・ヴァカンス』などを送り出し、日本SFの新たな中核をつくりだす。翌03年には、ハヤカワ文庫JAの新レーベル「次世代型作家のリアル・フィクション」を立ち上げ、冲方丁『マルドゥック・スクランブル』を3カ月連続刊行。07年には円城塔と伊藤計劃のデビュー単行本を手がけた。12年にはハヤカワSFコンテストを創設、選考委員もつとめている。
大森望 Nozomi Ohmori
1961年高知生まれ。書評家・SF翻訳家・SFアンソロジスト。〈ゲンロン 大森望 SF創作講座〉主任講師。著書に『21世紀SF1000』、『新編・SF翻訳講座』、《文学賞メッタ斬り!》シリーズ(豊崎由美と共著)、《読むのが怖い!》シリーズ(北上次郎と共著)など。アンソロジーに《NOVA 書き下ろし日本SFコレクション》、《不思議の扉》の各シリーズのほか、『星雲賞SF短編傑作選 てのひらの宇宙』など。訳書にコニー・ウィリス『ブラックアウト』『オール・クリア』など多数。2013年には『NOVA』が第34回日本SF大賞特別賞を受賞。