グループA展『かむかふかむかふかむかふかむかふ』講評会──講評会1

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〈ゲンロン新芸術校〉第6期、グループ展A展示の模様を五反田アトリエから生中継します。
放送開始は14:30頃を予定しています。
※講評会パートの放送はございません。予めご了承ください。

 

 

【展覧会概要】

展覧会名:「かむかふかむかふかむかふかむかふ」
出展者:川﨑豊 / 圡金 / 堀江理人 / 松岡湧紀 / 宮野かおり / 宮野祐
キュレーション:金子弘幸(CL課程) / 中村馨(CL課程)
グラフィックデザイン:宮野祐

グループA担当講師:堀浩哉 / 和田唯奈
講評会ゲスト講師:椹木野衣

会期:2020年9月13日(日)~9月20日(日)
※12日(土)は講評のため終日休廊
開廊時間:15:00-20:00
会場:ゲンロン五反田アトリエ 〒141-0022 東京都品川区東五反田3-17-4 糟谷ビル2F
※ 展覧会の会場はゲンロン五反田アトリエとなります。ゲンロンカフェでは開催されませんので、ご注意ください。
※ 講評日の9/12(土)は講評のため終日休廊とさせていただきます。ご了承ください。
※ 講評会会場への入場は、受講生のみとなっております。

<新型コロナウイルス感染症への対策のご協力のお願い>
※マスクを着用の上ご来場ください。
※入り口では手指の消毒、検温にご協力ください。
※混雑時は入場制限を行うことがあります。ご了承ください。

ステートメント

あるきっかけがひとを、出来事を、思想をつよくひきつけ、頭から離れなくする。理解しよう、解決しようとしてもそれが困難であればあるほど、そのうち自分の内側にもその対象が入り込んでくるあの時間。ここでおきていることは、普段われわれが何気なく使っている「考える」の表面的な営みとどこか距離を感じる。
 
批評家の小林秀雄は「考える」ということについて、本居宣長の論を敷衍する形で以下のように述べている。
 
「考える」の古い形は「かむかふ」です。「か」は特別に意味のない言葉です。「む」は身、すなわち自分の身です。「かふ」は「交わる」ということです。だから、「考える」ということは、自分が身をもって相手と交わるということです。……ある対象を向うに離して、こちらで観察するという意味ではありません。考えるということは、対象と私とが、ある親密な関係へ入り込むということなのです。(小林秀雄『学生との対話』新潮社、2014年)
 
親密性形成のもととなる愛着の発生が、母と子の肌のふれあいから起こるように、他者と、異なる思考とに思いを巡らし、つながろうとする行為は、言葉の応酬や知識の組み合わせにとどまらない。そこには非常に身体的な行為としてのイメージが伴う。
 
作品制作とはまさに、このフィジカルな「かむかふ」の実践ではないか。本展の作家は共通して、似ているようでいて異なる他者や信条、価値観等、緩くつながりながらも、わかりあおう、ひとつになろうとしてもどうしてかそれの叶わぬ対象をテーマとしている。作品を媒介に、対象との、身をもった交わりを試みているのだ。
 
その作家の「かむかふ」痕跡である作品。これが鑑賞者の前にさしだされたとき、そこに何が起こるのだろうか。
 
 えてして私たちは予定調和を守るために、積極的に自分の内側を明かすことのない生活を送る。素顔を仮面で隠し、日々を当たり障りなく過ごそうとする。しかし、それでもそこにある秩序を乱すことをいとわないほどに、どうしてもさらけ出し、表現することの止められない思いが発露することがある。
 
 それが必ずしも打って響くとは限らない、それでも差し出さずにはいられない、作家それぞれの「あいだ」に対する切実な問いかけ。それは展示空間において鑑賞者を共時的な場に呼び込み、「かむかふ」ことによる連続したつながりへと開くのだ。
 
 本展は、他者と他者をフィジカルに結び付け、ゆるやかなつながりを生む、作品の「かむかふ」装置としてのある試みである。

(中村馨)

 

 

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椹木野衣 Noi Sawaragi

1962年埼玉県秩父市生まれ。1990年代初頭から東京を拠点に批評活動を始める。最初の評論集『シミュレーショニズム』(増補版、ちくま学芸文庫)は、90年代の文化動向を導くものとして広く論議を呼ぶ。また「アノーマリー」展(村上隆、ヤノベケンジほか参加、1992年、レントゲン藝術研究所)、「日本ゼロ年」展(岡本太郎、成田亨、横尾忠則ほか参加、水戸芸術館)ではゲスト・キュレーターを務めた。主著となる『日本・現代・美術』(新潮社)では日本の戦後を「悪い場所」と呼び、わが国の美術史・美術批評を根本から問い直してみせた。ほかに著書多数。2015年刊行の最新刊に『後美術論』(第25回吉田秀和賞、美術出版社)、『アウトサイダー・アート入門』(幻冬舎新書)、『戦争画とニッポン』(会田誠との共著、講談社)、『日本美術全集 第19巻 拡張する戦後美術』(責任編集、小学館)、『Don’t Follow the Wind 公式カタログ2015』(Chim↑Pomとの共著、河出書房新社)がある。また2014年に演出家の飴屋法水と「グランギニョル未来」を結成、日航機123便事故、東京電力福島第一原発事故を主題とする活動も行っている。

堀浩哉 Kosai Hori

1947年富山県生まれ。美術家。多摩美術大学名誉教授。1969年に「美共闘」(美術家共闘会議)を結成、議長を務める。2010年、東京・秋葉原のアーツ千代田3331内に多摩美術大学運営のオルタナティブ・スペース「アキバタマビ21」を開設し、プロデューサーを務める(2012年まで)。第41回ヴェネツィア・ビエンナーレ、「ユーロパリア・ジャパン’89」(ゲント現代美術館)、「今日の日本」(ルイジアナ近代美術館、デンマーク他巡回)、釜山国際アートフェスティバル、「センチュリー・シティー」(テート・モダン)、越後妻有アートトリエンナーレなど、国内外の展覧会に多数参加。近年の展覧会に「堀浩哉展─起源」(多摩美術大学美術館)、「ミニマル/ポストミニマル」(宇都宮美術館)、釜山ビエンナーレ、「1968年激動の時代の芸術」(千葉市美術館)、「ニューウエイブ現代美術の80年代」(国立国際美術館)、「堀浩哉+堀えりぜ 記憶するためにーわたしはだれ?」(丸木美術館)など。

和田唯奈 Yuina Wada

画家。1989年岐阜県生まれ。加納高等学校美術科、名古屋芸術大学洋画2コース卒業。Gallery Delaive(アムステルダム)所属。GEISAI#17鈴木心賞受賞、ゲンロン カオス*ラウンジ新芸術校第1期夏野剛賞、2期上級コース卒業。「絵と心と家族」への関心から、2017年4月より『しんかぞくのお家』を主催。2019年3月には、絵本『ぽっかりちゃん』をART DIVERより刊行。
主な展覧会:
2013-2014年 個展 Gallery Delaive(アムステルダム)
2018-2019年 お絵描きのお家による絵画展『しんかぞく』 都内各所、B.Esta337(東京)
2019年 あいちトリエンナーレ内企画『レンタルあかちゃん』 豊田市駅周辺(愛知)

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放送開始
2020/09/12 14:30
放送終了