ショッピングモールから考える#2内と外が逆転した新たなユートピア

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20140130-1

【イベント概要】

「ショッピングモール」——『思想地図β』創刊号で、グローバル化した現代社会を捉えるキーワードとして提唱された概念だ。オタク文化や観光など、人類の欲望の表象を思考し続ける東浩紀と、工場、団地、マンションポエムなど、消費社会の構造に組み込まれた萠えポイントを追求する大山顕が、ショッピングモールを語り尽くす!シリーズ第2弾。

2014年1月30日に行なわれた「ショッピングモールから考える」#1 の大山のプレゼンテーションはこちらで、東のプレゼンテーションはこちらでご覧いただけます。

* * *

「ショッピングモールから考える」大山顕

実は東さんにいきなり「モールについて話しようぜ!」ともちかけられて「いいっすね!」と返したっきりで、この欄でそのイベント内容を説明しかねています。でもまあ、とりあえずなぜぼくが二つ返事でお答えし、イベントを待ち遠しくしているかを、以下に説明しましょう。

過日、初めてのバンコクへ旅行に行きました。そこでいちばん面白かったのは、現地の巨大なモール群で、このとき以下のようなツイートをしました。

“バンコクのモールめぐりちょうたのしい。はじめは「日本と変わらない!ていうか日本よりずっと気が利いてる!」とか月並みなことおもったけど、だんだん、これは国ごとの商業の話じゃなくで「モール」っていう世界中に散らばったひとつの共和国なんだなと。”

これに対して東さんが食いつき、せっかくの海外旅行なのにひとしきりその場でやりとりしたものです。たしかアソークのモール内にあるレストランでリプライし合ったと記憶してます。インターネットって旅情を台無しにするなあ。

先日ゲンロンカフェでひさしぶりに東さんと「チェルノブイリ萌え!?」というタイトルでトークイベントを行い(なんつうタイトルだしかし)、ぼくが工場景観に崇高さを感じていることと、同じく産業や生活を支えるインフラであった原子力発電所を観光対象にすることとのつながりについて話しました。たのしかった。

工場や団地、ジャンクションといった「インフラ構造物」を写真に収めてきたぼくにとって、巨大なモールもまたとても気になる「インフラ」です。だから、もしかしたら工場と発電所とモールとは、ぼくのなかで「萌える」対象としてつながっているかもしれない。というか、確実につながっている。

特異な鑑賞者であるぼくにとってだけではなく、おそらくいま都市で消費生活を送る人間全てにとって、これらはつながっている。そしてそれが風景の中である崇高さを獲得する規模で存在していることにもまた、共通する意味があるに違いない。

というようなことを、ぼんやりと考えています。すごくぼんやりなので、ぜひこれを東さんにくっきりさせていただきたいと、そう思うわけです。乞うご期待。

あと、同じくバンコクで以下のようなツイートもしました

“あと改めて衝撃だったのは、最新のモールには、家電屋がないこと。ぼくの子供の頃のショッピングセンターには必ずあった(ラオックスとか)けど、もはやあれはファッションにはなりえないんだろうな、と思うと元家電メーカー社員としてはショック。”

そうしたら、先日ゲンロンで行われていた福島第一原発観光地化計画の展示で、家電を集めてタワーにした提案があって、ちょっと震えた!ここらへんの「家電ってなんだったんでしょうね」という話もしたいなー、と思ってます。

 

大山顕 OHYAMA Ken

フォトグラファー/ライター。1972年11月3日生まれ。1998年千葉大学工学部修了。研究テーマは工場構造物のコンバージョン提案。工業地域を遊び場としてきた生い立ちがこの論文に結実。卒業後松下電器株式会社(現Panasonic)に入社。シンクタンク部門に10年間勤めた後、フォトグラファーとして独立。出版、イベント主催などを行っている。
主な著書に『工場萌え』『団地の見究』(共に東京書籍)『ジャンクション』(メディアファクトリー)、『ショッピングモールから考える——ユートピア・バックヤード・未来都市』(東浩紀との共著、幻冬舎新書)『新写真論 スマホと顔』(ゲンロン)。

東浩紀 Hiroki Azuma

1971年東京生まれ。批評家・作家。東京大学大学院博士課程修了。博士(学術)。株式会社ゲンロン創業者。著書に『存在論的、郵便的』(第21回サントリー学芸賞)、『動物化するポストモダン』、『クォンタム・ファミリーズ』(第23回三島由紀夫賞)、『一般意志2.0』、『弱いつながり』(紀伊國屋じんぶん大賞2015)、『観光客の哲学』(第71回毎日出版文化賞)、『ゲンロン戦記』、『訂正可能性の哲学』など。

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