学問とニコニコの交差点──『ニコニコ学会βのつくりかた』刊行記念イベント

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【イベント概要】

2011年から5年間にわたり、全9回のシンポジウムを開催した「ニコニコ学会β」。
六本木のニコファーレやニコニコ超会議内の特設ブースを会場に、全9回すべてをニコニコ生放送で中継し、登壇者は400名以上、視聴者はのべ70万人を超える一大イベントとなった。

今年5月に出版された『ニコニコ学会βのつくりかた』(江渡浩一郎+くとの、フィルムアート社)には、ニコニコ学会βの立ち上げから、「散開」までの5年間の歴史を踏まえ、イベントはどう企画立案すべきか、そのための組織をいかにして作るか、登壇依頼や広報はどうすればよいか――など、イベント運営とコミュニティづくりのための方法論が、具体的かつ詳細に、たっぷりと詰め込まれている。

いまの日本でイノベーションを起こしうる研究コミュニティを作るために、ニコニコ学会βはどのように運営されてきたのか。その背景にはどんな問題意識があるのか。

ゲンロンカフェでは、共著者である江渡浩一郎さん(ニコニコ学会β実行委員長・プログラム委員長)、くとのさん(ニコニコ学会β運営委員長)をゲストに迎える。聞き手を務めるのは、ニコニコ学会βに登壇経験を持ち、自身もゲンロンカフェのオーナーとして日々イベントの企画・運営に携わる東浩紀。

いまの日本で「おもしろいイベント」をやるとはどういうことか。
自分たちも楽しみつつ、継続して安定した運営を続けるためにはどうすればいいのか。
数多くの研究者を招き、ふだんと違う環境で発表してもらうことで生まれた変化とは。

最先端の研究と「ニコニコ」の出会いがもたらすものはなにか?
その可能性が明らかに!

【登壇者より】

『ニコニコ学会βのつくりかた』は、単に「おもしろいイベントをするためのマニュアル本」ではありません。
その背景にあるのは、今日の日本でイノベーションをどう起こすか、それができるコミュニティを立ち上げるにはどうすればよいかという問題意識です。おもしろいイベントのレシピそのものは、氷山の一角で表層的なものにすぎません。なぜイノベーションを起こさないといけないのか、そのために誰もができる/参画できることは何なのか、その実装論としてのイベントのつくりかた、という流れで私たちは執筆しました。
最近では「緩やかに下り坂を下ろう」なんて声もありますが、足下だけを見てとぼとぼ歩む社会には、きっと楽しさも夢もないでしょう。宇宙を仰ぐ一人ひとりが本当に面白い・楽しいと思えることを突き詰めていき、それを実現する場をつくって社会に実装していけば、それは新しい形のイノベーションを共創して社会全体のパイを大きくしていき、誰もが胸を張って生きていけるのではないでしょうか。
こんなことを言うと、空想的な夢物語と思われるかもしれません。しかし、今までにない面白いものを楽しく作る/研究するという思いはニコニコ学会βシンポジウムの登壇者や参加者に共通することで、その集積が新たなる学術コミュニティたるニコニコ学会βという「場」を生み出し、そこから生まれた共創がイノベーションを生み出す強力な「磁場」を形成しました。ニコニコ学会βが全9回のシンポジウムを終えてなお、イノベーションを志向する人々を引き寄せる理由は、そんなところにあるのでしょう。

この鼎談では、ニコニコ学会βのコンセプトを踏まえてその軌跡をたどりつつ、おもしろいイベントをどのようにつくるかという実践例を具体的に取り上げます。おそらくそれは、一般的なイベント論を越えていき、ニコニコ学会βならではの尖ったイベントのつくりかたや、共創型イノベーションのためのコミュニティづくりといった議論に展開していくでしょう。
そして、この3人ならではの要素として「場」への視座があります。社会を変革するようなイノベーションを創発するような「場」は単なる人の集まりではなく、深い思想的背景を本来持っているはずです。例えばプラトンが提示したイデアがいわば胚胎する「場」(コーラ)は、現代においてはデリダが注目した(『コーラ―プラトンの場―』)ように、様々な解釈と議論を呼んだことで有名です。
新たな何かを生み出す、つまりニコニコ学会βが取り組んできたイノベーションを創発する場というのは、思想や哲学からの再検討によっても賦活されるものなのです。(くとの)

 

【イベント後記】

 

 

 

当日のtweetのまとめはこちら

togetter

江渡浩一郎 Koichiro Eto

撮影=Yoichi Onoda
ニコニコ学会β実行委員長・プログラム委員長。
1997年、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。2010年、東京大学大学院情報理工学系研究科博士課程修了。博士(情報理工学)。メディアアーティストとして、「sensorium」でアルス・エレクトロニカ賞グランプリを1997年に受賞。国立研究開発法人産業技術総合研究所主任研究員として「利用者参画によるサービスの構築・運用」をテーマに研究を続ける傍ら、2011年11月に「ニコニコ学会β」を立ち上げた。おもな著書に『進化するアカデミア』(イーストプレス)、『ニコニコ学会βを研究してみた』(河出書房新社)、『パターン、Wiki、XP』(技術評論社)。

くとの Chthono

ニコニコ学会β運営委員長。
電子工作や自作真空管アンプにいそしんだ小学生の頃、将来の夢はリニアモーターカーの研究開発。人間が生きる根源を問いたくて哲学・宗教学の道に進路変更するも、大学生時代は文系学部からロボットコンテストに参戦。その後は宗教思想の文献研究を続けたが、ひょんなことでLED5000個使用の初音ミク電飾ウェディングドレスをチームで制作してからニコニコ学会βに関わり、研究者人生に大きな転機が訪れる。文系学部の危機が叫ばれるなか、実装のない思想・思想のない実装を打破すべく「作る人文学」をかかげ、人文系と理工系の境界領域で活動。抽象的で難解な宗教思想の概念を視覚化・可触化し、誰にも理解しやすい感覚対象として表現するなど、先鋭的な研究を進めている。

東浩紀 Hiroki Azuma

1971年東京生まれ。批評家・作家。東京大学大学院博士課程修了。博士(学術)。株式会社ゲンロン創業者。著書に『存在論的、郵便的』(第21回サントリー学芸賞)、『動物化するポストモダン』、『クォンタム・ファミリーズ』(第23回三島由紀夫賞)、『一般意志2.0』、『弱いつながり』(紀伊國屋じんぶん大賞2015)、『観光客の哲学』(第71回毎日出版文化賞)、『ゲンロン戦記』、『訂正可能性の哲学』など。

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放送開始
2016/07/16 19:00
タイムシフト視聴終了
2016/07/23 18:00
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放送開始
2016/11/02 18:00
タイムシフト視聴終了
2016/11/09 18:00
放送開始
2016/08/03 18:00
タイムシフト視聴終了
2016/08/10 18:00