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【イベント概要】
2015年9月、いわきで「市街劇」と称したツアー型美術展「怒りの日」を開催したカオス*ラウンジ。今年は平と小名浜の2会場を使って「新芸術祭」を開催! さらにパワーアップした市街劇が上演される予定である。
東京の美術家集団が東京から離れて、いわきでいまアートプロジェクトを開催するのはなぜなのか? 一般の「地域アート」とはどこが違うのか。カオス*ラウンジを主宰する美術批評家の黒瀬陽平が、今年度の「新芸術祭」をサポートするいわきのアクティビスト・小松理虔とともに、「上演型」美術展の新しい可能性について語り尽くす!
【展覧会概要】
『カオス*ラウンジ新芸術祭2015 市街劇「怒りの日」』は、 1970年代に寺山修司が考案した「市街劇」をオマージュし、福島県いわき市平(たいら)地区の複数会場をツアー形式で巡回させる、新しい形の芸術祭として好評を博しました。『カオス*ラウンジ新芸術祭2016 市街劇「地獄の門」』は、「カオス*ラウンジ新芸術祭」の第2回目として、市街劇「怒りの日」の続編として、市街劇形式を踏襲しながらも、新しいテーマと新しいアーティストたちを加えて開催します。
市街劇「怒りの日」では、平安時代の名僧「徳一」、浄土宗の袋中上人、いわきに残る不思議な「浦島伝説」や「死人田」といった「近代以前のいわき」へと遡り、「ありえたかもしれない福島」「ありえたかもしれない歴史」を描くことで、想像力による「現実からの脱出」を試みました。
今回の市街劇「地獄の門」では、近代以前の歴史、物語から、近現代へと視線を向けます。たとえば、KOURYOUとサイト制作チームは、「怒りの日」でカオス*ラウンジが扱ったいわきの伝説を徹底的にリサーチし、ウェブ上に広大な「伝説マップ」を作り上げました。そして、いわきの郷土史家・夏井芳徳の短編小説「キツネ裁判」を「二次創作」し、現代の物語へと変形してゆきます。また、現代美術家集団であるパープルームは、大正時代に平地区で活動し、洋画家の若松光一郎や詩人の草野心平らを輩出した前衛美術集団「X会」を自らに「憑依」させ、X会とパープルームと名づけられたインスタレーションを展開します。岸井大輔は、いわきに残る「龍燈伝説」を震災後の物語として読み替える「戯曲」を制作。市街劇をいわきの海岸線全域へと拡張します。さらに、今回はいわき出身、在住の現代美術家・吉田重信も参加しています。
近代以前から現代へと歴史をたどりながら、「ありえたかもしれない神話」を、「ありえたかもしれない前衛」を描くうちに、私たちは「現実からの脱出」のみならず、私たちが目にしている現実や歴史そのものへの介入にとりかかるのです。
【同時開催】市街劇「小名浜竜宮」
『カオス*ラウンジ新芸術祭2016 市街劇「地獄の門」』との同時開催展として、小名浜地区の複数会場を使った市街劇「小名浜竜宮」を開催します。平地区で開催される「地獄の門」と同様に、複数会場をツアー形式で巡回させる市街劇形式の展覧会で、いわきに伝わる独特の「浦島伝説」をもとに、総勢16組ものアーティストが新作を発表します。
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参加アーティスト、開催期間など展覧会の詳細は、カオス*ラウンジの公式ウェブサイトからご確認いただけます。
→カオス*ラウンジ新芸術祭2016 市街劇「地獄の門」
【イベント後記】
当日のtweetのまとめはこちら!
黒瀬陽平 Yohei Kurose
1983年生まれ。美術家、美術評論家。ゲンロン カオス*ラウンジ 新芸術校主任講師。東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。博士(美術)。2010年から梅沢和木、藤城嘘らとともにアーティストグループ「カオス*ラウンジ」を結成し、展覧会やイベントなどをキュレーションしている。主なキュレーション作品に「破滅*ラウンジ」(2010年)、「キャラクラッシュ!」(2014年)、「カオス*ラウンジ新芸術祭2015『市街劇 怒りの日』」(2015年)など。「瀬戸内国際芸術祭2016」にカオス*ラウンジとして参加。著書に『情報社会の情念』(NHK出版)。
小松理虔 Riken Komatsu
撮影=鈴木禎司
1979年いわき市小名浜生まれ。ローカルアクティビスト。いわき市小名浜でオルタナティブスペース「UDOK.」を主宰しつつ、いわき海洋調べ隊「うみラボ」では、有志とともに定期的に福島第一原発沖の海洋調査を開催。そのほか、フリーランスの立場で地域の食や医療、福祉など、さまざまな分野の企画や情報発信に携わる。共著本に『常磐線中心主義 ジョーバンセントリズム』(河出書房新社)、『ローカルメディアの仕事術』(学芸出版社)ほか。初の単行本著書である『新復興論』(ゲンロン)が第18回大佛次郎論壇賞を受賞。2019年9月より『ゲンロンβ』にて「当事者から共事者へ」を連載中。