ネットで
見る
-
一般無料
〈ゲンロン 大森望 SF創作講座〉の実作講評会の模様を無料生中継します。放送開始は22:00を予定しています。
タイムシフトは公開しませんので、あらかじめご了承ください。
【梗概課題】
昨年の講座では「“謎”を解こうとする物語の作成」という課題を出しました。そのとき、主任講師の大森望氏が例に挙げたのが、フレデリック・ブラウンの「ミミズ天使」。ミステリ風の作品ですが、裏から見ると、完璧なはずのシステムにエラーが生じたため、世界が狂ってしまう寓話と読むこともできます。
あるいは、スタニスワフ・レムの短篇集『宇宙飛行士ピルクス物語』。これもシステムのバグやエラーに注目した連作で、SFというジャンルの盲点をつくような発想に満ちています。「想定外のアクシデント」をリアルに想像することは、驚きのあるストーリーを組み立てるうえでも、大きなプラスになると思います。
ただしエラーといっても、ネガティヴなものばかりではありません。生物の突然変異はDNAの複製エラーから生じるものですし、偶然のしくじりが大発見に転じるセレンディピティのようなケースもあります。SFの枠組を用いれば、コミュニケーション不全やヒューマンエラーをユーモラスに描くこともできるでしょう。「ある人のミスが別の人にはデータになる」という「失敗学」の格言(?)をもじれば、「ある人のミスが別の人にはドラマになる」――広い意味での「エラー」(失敗・錯誤・障害etc.)をモチーフに、「失敗」を恐れないスリリングな物語を構想してください。
(法月綸太郎)
【実作課題】
いまどき、そこそこうまい文章は誰でも書けます。
どこかの料理教室で「けんちん汁」を作ってきなさいという課題が出たとします。それはなにかを知らない人でも、検索すればそれらしいものが作れるでしょう。
でもまあ、そういうことではないわけです。
小説を書くということは、知らない人に、創作料理を食べさせるようなところがあります。有料で。
まずは、自分自身が驚くべきです。自分でもありきたりと思うものを、他人が面白いと思うことはまずありません。
キャラクターが勝手に動きだす、というのも驚きの一種です。自分にこんなことが書けたのか、と驚くこともあるでしょう。書き終えたとき、なにかがわかったという気持ちになることもあるでしょう。
書いてはじめてわかることがあるはずです。そうでなければ、たとえば『SFの書き方 「ゲンロン 大森望 SF創作講座」全記録』を読むだけでも、書くということが理解できるはずです。
★アピールには、梗概を書くことで自分が何に驚いたか、あるいは実作後、何に驚く予定かを付記して下さい。
(円城塔)
【イベント後記】
当日のtweetのまとめはこちら!
法月綸太郎 Rintaro Norizuki
都丸尚史(講談社) Naofumi Tomaru
大森望 Nozomi Ohmori
1961年高知生まれ。書評家・SF翻訳家・SFアンソロジスト。〈ゲンロン 大森望 SF創作講座〉主任講師。著書に『21世紀SF1000』、『新編・SF翻訳講座』、《文学賞メッタ斬り!》シリーズ(豊崎由美と共著)、《読むのが怖い!》シリーズ(北上次郎と共著)など。アンソロジーに《NOVA 書き下ろし日本SFコレクション》、《不思議の扉》の各シリーズのほか、『星雲賞SF短編傑作選 てのひらの宇宙』など。訳書にコニー・ウィリス『ブラックアウト』『オール・クリア』など多数。2013年には『NOVA』が第34回日本SF大賞特別賞を受賞。