ゲンロン 大森望 SF創作講座 第3期第1回

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〈ゲンロン 大森望 SF創作講座〉の講評会の模様を無料生中継します。放送開始は22:00を予定しています。
タイムシフトは公開しませんので、あらかじめご了承ください。

 

【梗概課題】

AIあるいは仮想通貨を題材に短編を書け

この講座も3年目。ぼくが課題を出すのも3回目。ぼくの授業は毎回講座の初めに置かれています。

1年目は、ジャンルSFの核である「センス・オブ・ワンダー」を磨いてほしいということで、「変な世界を設定せよ」という課題を出しました。2年目は逆に、日常の延長にSFを持ち込む手腕を見たいということで、「五反田をSFにせよ」という課題を出しました。いずれも、これからの厳しい1年(創作講座のスケジュールはまじめに取り組むとかなりハードです)に向かいあうにあたり、まずはSFとはなにか、SFでなにができるかを真剣に考えてほしいという希望を込めて設定した課題です。

今回の課題もまた、同じ希望を込めて考えました。SFはそもそもサイエンス・フィクションの略。つまり科学小説です。SFの歩みは科学の進歩と切ってもきれない関係があり、名作のなかには、それぞれの時代の最先端の科学的知見や技術的可能性を大胆に取り入れたものが少なくありません。アイザック・アシモフは科学ライターとしても有名なひとでした。

というわけで、みなさんにもぜひ、最先端の科学を取り入れた作品を書いてみてほしいと考えました。そして2018年の日本で最先端といえば、それはもう、AIとか仮想通貨とかシンギュラリティとか、そういうのに決まっている。だからそれで書いてもらいたい次第です。

いやいや、むろん、ぼくだってわかってます。きっとみなさんのなかには、ぼくなんかより科学知識の豊富なかたがいて、そんな手垢のついたネタよりもっと知的でわくわくする話題があるよ、そっちこそ本当の最先端だよ、人類を変えるんだよと言いたいひとが多いにちがいありません。そりゃそうに決まっている。科学の世界は広大ですからね。けれども、ほら、みなさんは「プロ」を目指すわけです。プロとはなにか。それはアマチュアを相手にする人々です。プロの作家とは、同僚の研究者向けに小説を書くのではなく(そういうひともいるのですが)、一般読者に向けて、「彼らが想像する最先端」を書かなきゃいけない職業です。そもそもプロになったら、週刊誌や新聞にも書かなければいけない。担当記者や編集者は、準惑星と小惑星の区別もついていないし、ウィルスと細菌の区別もついていないかもしれません。現実はそんなもんです。そしてそんななか、SF作家というだけで、AIや仮想通貨にも詳しいとカンチガイされ、コメントを求められる時代が来るわけです(来ないかもしれないけど)。そのときの準備をいまからしておこう、ということですね!

というわけで、2018年ならではの、AIあるいは仮想通貨ネタの楽しい短編を期待しています!

(東浩紀)

 

 

ゲンロンSF創作講座2018へようこそ

2016年4月にスタートした「ゲンロン 大森望 SF創作講座」は、3年目を迎え、このほど、第3期を開講する運びとなりました。

実際にどんな講義が行われているかについては、第1期の内容をコンパクトにまとめた『SFの書き方 「ゲンロン 大森望 SF創作講座」全記録』(早川書房)をぜひ読んでみてください。ゲスト講師陣の講義と講評、受講生が提出した梗概(+アピール)および実作例を収録し、編者の手前味噌ながら、1年間の講座の成果を1冊に凝縮した、たいへん中身の濃い本になったと自負しています。

この第1期の成果を受けて2017年に開講した第2期は、最初からハイレベルな作品が提出されました。2018年には、その中でも高い評価を得た講座提出作を改稿した「Final Anchors」と「天駆せよ法勝寺」で、八島游舷氏が、第5回日経「星新一賞」グランプリと、第9回創元SF短編賞をそれぞれ受賞。また、同じく第2期受講生の神津キリカ氏は、「水靴と少年」で、第1回宮古島文学賞の一席を受賞。さらに、第1期の受講生である名倉編氏は、『異セカイ系』で第58回メフィスト賞を受賞し、今夏にも講談社から書籍化される予定とのこと。

……などと書いていると、合格実績をアピールする予備校の宣伝みたいですが、こうした成果はそれぞれの書き手の努力の賜物。ゲンロンSF創作講座は、べつだん「新人賞を獲らせること」を第一の目的にしているわけではありませんし、受講生も、作家デビューを目指す人ばかりではありません。「ゲストの話を聞きたい」とか、「小説を書いている人たちと交流してみたい」とか、「本物の編集者と話がしてみたい」とか、そういうカジュアルな参加も歓迎します。また、作品を書くつもりはまったくないが講義は聞きたいという人には、聴講生システムも用意しています。受講生全員(聴講生含む)には、講義および講評すべてを収録した動画アーカイブが公開されるので、講義を欠席しても、自宅で視聴できます。

逆に、石にかじりついてでも職業作家になりたい人にとっては、実力を試す最高の場になるはず。書きたい作品のあらすじとポイントをアピールする力は、プロになったとき、必ず役に立つでしょう。

小説の書き方は、かならずしも教えられて身につくものではありません。とはいえ、ジャンルのさまざまなテーマに応じた作法や心構え、やってはいけないことなど、学べることもたくさんあります。これまで、公募新人賞への投稿と落選を漫然とくりかえしてきた人は、自分が考えたプロット、書き上げた作品をプロの講師に見てもらい、意見や評価を聞くだけで、よほど効率的に小説のスキルが磨けるはず。ファンタジーやホラー、ミステリ、純文学など、SF以外の分野で作家になる道を模索している人にとっても、小説を書く基本は同じですし、SFの書き方を身につければ、それが強力な武器となるでしょう。

第三期のゲンロンSF創作講座で新たな個性に出会えるのを楽しみにしています。

主任講師
大森望

 


大森望編『SFの書き方 「ゲンロン 大森望 SF創作講座」全記録』(早川書房)

 

【イベント後記】

 

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東浩紀 Hiroki Azuma

1971年東京生まれ。批評家・作家。東京大学大学院博士課程修了。博士(学術)。株式会社ゲンロン創業者。著書に『存在論的、郵便的』(第21回サントリー学芸賞)、『動物化するポストモダン』、『クォンタム・ファミリーズ』(第23回三島由紀夫賞)、『一般意志2.0』、『弱いつながり』(紀伊國屋じんぶん大賞2015)、『観光客の哲学』(第71回毎日出版文化賞)、『ゲンロン戦記』、『訂正可能性の哲学』など。

小浜徹也(東京創元社) Tetsuya Kohama

1962年、徳島県生まれ。京都大学SF研究会OB。1986年に東京創元社へ入社し、編集者として一貫してSFを担当。近年の担当書籍は、松崎有理、宮内悠介、酉島伝法、高山羽根子など創元SF短編賞出身者の作品、中村融のテーマSFアンソロジーや、2016年に始めた創元SF文庫の新版・新訳版シリーズ〈SFマスターピース〉など。ウンベルト・エーコと島崎博の来日イベントの司会をつとめたことが生涯の自慢。2000年に柴野拓美賞を受賞。

大森望 Nozomi Ohmori

1961年高知生まれ。書評家・SF翻訳家・SFアンソロジスト。〈ゲンロン 大森望 SF創作講座〉主任講師。著書に『21世紀SF1000』、『新編・SF翻訳講座』、《文学賞メッタ斬り!》シリーズ(豊崎由美と共著)、《読むのが怖い!》シリーズ(北上次郎と共著)など。アンソロジーに《NOVA 書き下ろし日本SFコレクション》《不思議の扉》の各シリーズのほか、『星雲賞SF短編傑作選 てのひらの宇宙』など。訳書にコニー・ウィリス『ブラックアウト』『オール・クリア』など多数。2013年には『NOVA』が第34回日本SF大賞特別賞を受賞。

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放送開始
2018/06/21 20:00
タイムシフト視聴終了
2018/06/21 23:00