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[実作講評]一般無料
〈ゲンロン 大森望 SF創作講座〉の講評会の模様を無料生中継します。放送開始は22:00を予定しています。
タイムシフトは公開しませんので、あらかじめご了承ください。
【実作課題】
あなたが最初に読んだSF(小説限定)は何ですか? それは何歳の時で、その作品は今のあなたにどんな影響を与えましたか?
今回の課題は、まだSFを読んだことのない読者のために、「初めてのSF」を書くことです。「初めてのSF」といっても、小中学生向けのジュヴナイルや取っつきやすいショートショートに限りません。ジャンル小説特有のお約束が通用しない白紙の読者を念頭に置いて、もっとこんな小説を読みたいと思わせるような、入門的で吸引力のある新作SFを書いてほしいのです。
白紙の読者というのは、ピンポイントでもかまいません。「ビジネス書と時代小説しか読まない親戚のおじさん」「SFなんて漫画や映画で十分で、わざわざ活字の小説を読む意味はないとうそぶく友人」「将来、あなたの子どもや孫が『科学』や『物語』に興味を持った時、黙って手渡す本(デジタルブック)」等々、広い意味でのファースト・コンタクトでありさえすれば、どんな対象を想定してもOK です。
作品のテーマにあなた自身のSF初体験を投影する必要はありませんが、ビギナーだった頃の目が覚めるような気持ちは忘れないでください。まだ見ぬ新しい読者をひとりでも多くSFの虜にして離さない、フレッシュで力強い物語を期待しています。
(法月綸太郎)
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【梗概課題】
現在の娯楽小説は、いわゆるキャラ文芸のようにキャラクターが強い傾向を持ちます。なので、商業的に考えると、キャラクターを中心として進むタイプの物語を書けるにこしたことはありません。
キャラクターを二人以上作って、その人間(?)関係で回る物語を作って下さい。
SFの講座なので、キャラクターがSFらしいギミックを背負っているようにしてください。ロボットと人間の関係でも、異星人と人間でも、異星人同士でも、免疫抗体とウイルスの関係でも、惑星と衛星の関係でもかまいません。あるいは、キャラクターの関係がSFらしいギミックになっているものでもありません。接触するとエネルギーを発して消滅する恋人同士でも、タイムスリップして出会うとタイムパラドックスが起こる本人同士でも、なんでもよいです。
だいじなのは、「そのキャラクターの関係性に魅力を持たせて、読み手に好きになってもらうこと」です。キャラクターは、個別に立てるだけでなく、キャラクター同士の関係に引きつけることができると、より可読性が上がります。ここがしっかり魅力的にできていると、物語の構造が一気に安定するのです。
オーソドックスな技術だからこそ、出来不出来の差が出るところでもあります。しっかりと身につけておきましょう。
アピール文には、「どのようなキャラクター関係」であり、「その関係がどのように読者を楽しませて」「その関係がSFとしてどのような見るべき点を持つか」を書いてください。
今回は構造の勝負なので、梗概よりもアピール文の限られた情報で面白さを打ち出せると強いと思います。頭をひねってください。
(長谷敏司)
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長谷敏司 Satoshi Hase
1974年、大阪生まれ。2001年、第6回スニーカー大賞金賞を受賞した『戦略拠点32098 楽園』(KADOKAWA)でデビューしたのち、ライトノベルからSFに活動の場を広げる。2015年、『My Humanity』(早川書房)で第35回日本SF大賞を受賞。その他の著作に『円環少女』シリーズ(KADOKAWA)、『あなたのための物語』(早川書房)、『BEATLESS』(KADOKAWA)、『メタルギアソリッド スネークイーター』(KADOKAWA)、『ストライクフォール』シリーズ(小学館)など。最新刊『プロトコル・オブ・ヒューマニティ』(早川書房)が22年10月18日に発売した。
溝口力丸(早川書房) Rikimaru Mizoguchi
1991年生まれ。2014年より早川書房『SFマガジン』編集部所属。担当書籍にチャック・パラニューク『ファイト・クラブ〔新版〕』(ハヤカワ文庫NV)、『ハヤカワ文庫SF総解説2000』(単行本)、柴田勝家『クロニスタ 戦争人類学者』『ニルヤの島』(ハヤカワ文庫JA)など。
大森望 Nozomi Ohmori
1961年高知生まれ。書評家・SF翻訳家・SFアンソロジスト。〈ゲンロン 大森望 SF創作講座〉主任講師。著書に『21世紀SF1000』、『新編・SF翻訳講座』、《文学賞メッタ斬り!》シリーズ(豊崎由美と共著)、《読むのが怖い!》シリーズ(北上次郎と共著)など。アンソロジーに《NOVA 書き下ろし日本SFコレクション》、《不思議の扉》の各シリーズのほか、『星雲賞SF短編傑作選 てのひらの宇宙』など。訳書にコニー・ウィリス『ブラックアウト』『オール・クリア』など多数。2013年には『NOVA』が第34回日本SF大賞特別賞を受賞。