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[実作講評]一般無料
〈ゲンロン 大森望 SF創作講座〉の講評会の模様を無料生中継します。放送開始は22:00を予定しています。
タイムシフトは公開しませんので、あらかじめご了承ください。
【実作課題】
ヒーロー、あるいはヒロインの物語を書いてください。
「肌に色のついたベムにさらわれた美女を、銀色のロケットに乗って助けに行く白人男性」という意味ではありません(それで人を楽しませることができると思うなら挑戦してみてもいいですが、オススメはしません)。
読めば必ず心が動いてしまう小説で「正しさ」について書こうとすれば、無限にバリエーションのある悪や、誰でも共感できる怠惰、賢く見せることのできる諦念や、善悪を相対化する両論併記よりもずっと難しいことに気づくことでしょう。
ディーン・R・クーンツの『ベストセラー小説の書き方』の29ページ目から、一文を引用します。
悪人の行動パターンには、無限の可能性があり、どんなことでもできるのにひきかえ、
理想的なヒーローの方はといえば、読者の尊敬と同情を一身に受けるべく行動しなければ
ならず、自ずとその行動も限られてくる。
そんなわけで、難しいこのテーマに挑んでいただきます。
正しさ、強さの意味は時代とともに変わりますし、それぞれの立場に正しさがあります。小説にはそれを伝え、読者の心を動かすことができます。
あなたたちが何を正しいと思うのか、強いと思うのか。それを物語にしてください。それが一般的なものであればあるほど、物語に仕立て上げるハードルは高くなりますが、ぜひその困難に挑戦してください。
(藤井太洋)
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【梗概課題】
小学校の夏休みの課題といえば、かつては「アサガオの観察日記」が定番でした。それで思い出したのですが、もう40年ぐらい前、中学校の技術家庭科の授業でキク(挿し芽)の福助作りに挑戦したことがあります。隣のクラスのS君の鉢だけ、明らかに葉の形が異なるものが伸びてきて、どんなに世話をしても最後まで花をつけず、ひとり涙目になっていたのが忘れられません——あれはいったい、何だったのだろう?
閑話休題。今回の課題は「何かを育てる物語」です。
火星でジャガイモを育てる小説がありましたが、育てる対象は生物でも無生物でもかまいません。人工知能や組織的集団はもちろん、神や宇宙、言語化できないウンタラカンタラでも何でもござれです(育てる主体も同様)。ただし「何を育てるか/誰が育てるか」のアイデアだけに自足して、設計図通りに「作る」だけ、あるいは完全放置して「なりゆく」さまを観察するだけでは物足りない。
皆さんは「ゲンロンSF創作講座」の受講生として、「育てる/育てられる」関係の非対称性に自覚的であろうと思われます。そうした関係のせめぎ合いにも目を配りながら、「××育成シミュレーション」のテンプレに収まらない、育てる主体とその対象の間に生じるダイナミックな相互作用のドラマを描いてくれることを望みます。
(法月綸太郎)
法月綸太郎 Rintaro Norizuki
泉友之(講談社)
大森望 Nozomi Ohmori
1961年高知生まれ。書評家・SF翻訳家・SFアンソロジスト。〈ゲンロン 大森望 SF創作講座〉主任講師。著書に『21世紀SF1000』、『新編・SF翻訳講座』、《文学賞メッタ斬り!》シリーズ(豊崎由美と共著)、《読むのが怖い!》シリーズ(北上次郎と共著)など。アンソロジーに《NOVA 書き下ろし日本SFコレクション》、《不思議の扉》の各シリーズのほか、『星雲賞SF短編傑作選 てのひらの宇宙』など。訳書にコニー・ウィリス『ブラックアウト』『オール・クリア』など多数。2013年には『NOVA』が第34回日本SF大賞特別賞を受賞。