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〈ゲンロン カオス*ラウンジ 新芸術校〉第5期、グループ展A展示の模様を五反田アトリエから生中継します。
放送開始は14:15頃を予定しています。
※講評会パートの放送はございません。予めご了承ください。
【展覧会概要】
展覧会名:「ホンヂスイジャク」
出展作家:菊谷達史 / 平山匠 / 三浦かおり / 茂木瑶 / 山﨑千尋 / ユゥキユキ
キュレーション:海老名あつみ(CL課程)
キュレーションサポート:鴻 知佳子(CL課程)
デザイン:青息
会期:2019年9月14日(土) ~ 22日(日) ※9月21日(土)は講評のため終日休廊
開廊時間:15:00-20:00
【関連イベント】
◇トークイベント
タイトル:「美術×教育」
日時:9月22日(日)13:00〜15:00(開場12:50)
登壇者:黒瀬陽平、藤城嘘、梅沢和木:カオス*ラウンジ
定員:15名(先着順)
場所:ゲンロンカオス*ラウンジ五反田アトリエ
◇クロージングパーティー
日時:9月22日(日)15:00〜
会場:ゲンロン カオス*ラウンジ 五反田アトリエ 〒141-0022 東京都品川区東五反田3-17-4 糟谷ビル2F
※ 展覧会の会場はゲンロン カオス*ラウンジ 五反田アトリエとなります。ゲンロンカフェでは開催されませんので、ご注意ください。
※ 講評日の9/21(土)は講評のため終日休廊とさせていただきます。ご了承ください。
※ 講評会会場への入場は、受講生のみとなっております。
「ホンヂスイジャク」ステートメント
やがてくる廃仏毀釈のために
妖怪が現代日本を徘徊している、単純化という妖怪が。
*
これほどまでにシンプルな時代はあったであろうか。
ポピュリズムは世界を席巻し、左派・右派を問わず、複雑な問題をさも簡単に解決できるかのように喧伝するデマゴーグがあとをたたない。
結果として、彼らの存在そのものがより世界を不安定にし、事態を悪化させるのだから世話は無い。
一方で、自由と多様性をめぐる言説も混沌としている。
これらを尊ぶと称する人々のうちどれほどが、自分の価値観から遠く離れた存在でもダイバーシティのもと許容する覚悟があるだろうか。
排除された側が、別の場面では排除を行う側であったという事例も記憶に新しい。
*
結局、私たちはカール・シュミットの呪縛から逃れられないのだろうか。
世界は友と敵のいずれかであるというシンプルな二分法がやはり人間の本性なのか。
友でもない敵でもない中途半端な存在が傍にいることに耐えられないのか。
無論、人間には認知能力の限界がある。
ゆえに、物事を定義し類型化することで、我々は自らの認識の生産性を向上させてきた。
他方で、そうした営みは代償として世界における余白の捨象を強いる。
「家族」の再定義がその解決の糸口になるという。
他方、家族を抑圧的な存在としてしか認識できない者は、その「家族」という言葉の使い方に躊躇いを表明している。
こうした振る舞いが拙いと割り切ることは簡単である。
しかし、誰しも日々目の当たりにしている現実という重力からその思考が逃れられない存在である以上、こうした不器用さにも最後まで寄り添いたいのだ。
*
思い出してみたい。
かつて仏教が伝来した際、当初こそ土着の信仰との対立が生じたが、その後、仏教と古来の祭祀体系は混淆しつつ、ともに完全に融合することはなく一定の独立性と緊張感を抱えたまま社会に浸透していった。
そこでは仏を本地、神を垂迹とするという、要は土着の神は実は仏が姿を変えたに過ぎない同一の存在であるというアクロバティックな転回によって、現実の複雑さをその世界観に取り込んでいったのである。
この本地垂迹という世界認識こそ今日の私たちを隘路から解放する示唆となりうるはずだ。
そして、芸術が果たすべき役割はこうした世界認識の確立を支援することではないだろうか。
世界を多様なまま切り取って、余剰部分をも人々が負担なく、かつ深く認知できるものとして表現していく、そのような役割。
現代は、廃仏毀釈にも似た野蛮が再燃しうる岐路に立っている。
こうした状況下において、分断を乗り越え、硬直化された思考を解きほぐし、成熟の回路へといざなうのが芸術の最も大きな存在意義であろう。本展はそんなきっかけとなりたい。
(海老名あつみ)
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椹木野衣 Noi Sawaragi
1962年埼玉県秩父市生まれ。1990年代初頭から東京を拠点に批評活動を始める。最初の評論集『シミュレーショニズム』(増補版、ちくま学芸文庫)は、90年代の文化動向を導くものとして広く論議を呼ぶ。また「アノーマリー」展(村上隆、ヤノベケンジほか参加、1992年、レントゲン藝術研究所)、「日本ゼロ年」展(岡本太郎、成田亨、横尾忠則ほか参加、水戸芸術館)ではゲスト・キュレーターを務めた。主著となる『日本・現代・美術』(新潮社)では日本の戦後を「悪い場所」と呼び、わが国の美術史・美術批評を根本から問い直してみせた。ほかに著書多数。2015年刊行の最新刊に『後美術論』(第25回吉田秀和賞、美術出版社)、『アウトサイダー・アート入門』(幻冬舎新書)、『戦争画とニッポン』(会田誠との共著、講談社)、『日本美術全集 第19巻 拡張する戦後美術』(責任編集、小学館)、『Don’t Follow the Wind 公式カタログ2015』(Chim↑Pomとの共著、河出書房新社)がある。また2014年に演出家の飴屋法水と「グランギニョル未来」を結成、日航機123便事故、東京電力福島第一原発事故を主題とする活動も行っている。
黒瀬陽平 Yohei Kurose
1983年生まれ。美術家、美術評論家。ゲンロン カオス*ラウンジ 新芸術校主任講師。東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。博士(美術)。2010年から梅沢和木、藤城嘘らとともにアーティストグループ「カオス*ラウンジ」を結成し、展覧会やイベントなどをキュレーションしている。主なキュレーション作品に「破滅*ラウンジ」(2010年)、「キャラクラッシュ!」(2014年)、「カオス*ラウンジ新芸術祭2015『市街劇 怒りの日』」(2015年)など。「瀬戸内国際芸術祭2016」にカオス*ラウンジとして参加。著書に『情報社会の情念』(NHK出版)。