ゲンロン ひらめき☆マンガ教室 第4期#2ひらめきとは──ひらめき2

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【ネーム課題】

あなたの実際に経験したことと、それに対する感情を使って物語を描いてください

毎年のことですが、ひらめき☆マンガ教室の第1回目の課題は「自己紹介」にしています。

今年も同じことをやっていただきます!

しかし、皆さんはまだ課題をこなすことに慣れていないですから、今年は、具体的に何をやったらいいのか、わかりやすくしました。

以下、説明しますね。

1回目の課題で自己紹介を描いていただく理由は、まあ、何となくわかっていただけますよね。ひらめき☆マンガ教室に集まった人々(受講生、聴講生、そして講師とスタッフたち)が、お互いのことをよく知るためです。あなたがどんな人なのか、どんな感じ方をする人なのか知るためには、あなたの経験や感情がもとになった作品を描いていただくのがいい、というわけです。

その自己紹介を、具体的には「あなたの実際に経験したことと、それに対する感情を使って物語を描く」というやり方でやってください、というのが、今回の課題です。

たぶん、そのやり方は2パターンあります。

ひとつは、あなた自身がマンガに登場するパターンです。いわゆるエッセイコミックとか体験記というものに近いですね。

もうひとつは、あなたの経験と感情をベースにしているけど、あなたではない第三者、つまりキャラクターにそれを演じさせる、というパターンです。

どちらのパターンで描くかは自由です。ただし、重要なこととして、実際にあなたが経験したことを描くにせよ、結局はそれをあなた自身とは切り離したエピソードのように描いてくれ、すなわち「物語」にしてくださいね、というのが、今回の課題です。

物語にするってことは、つまり、実際にあなたが経験したことと、全く同じでなくていいってことです。

たとえばあなたとお母さんの話を描くのであれば、あなた自身ではなくお母さんの立場で描いたっていいです。あなたが実際に行動したのと違った結末を描いたっていいのです。「あなたの経験と感情をベースにして」いるなら、SFだっていいし、時代劇だっていいです。あるいは、実際にはそんなことは思わなかったんだけど、あとでその経験を客観的に振り返ってみたら、こういうふうに思うなあ、ということをキャラクターに思わせたっていいです。

というわけで、最低限、語り手(主人公)となるキャラクターが登場し、作者自身の経験や経歴に基づいた何らかの読み物として、最後に「おわり」とエンドマークが打てるものを描いてみてください。あっ、作品を読むのはあなたのことを全く知らない人かもしれないですから、「ゲンロンが〜」とか「ひらめきが〜」とか「一年間よろしくお願いします」みたいな、あなたの身辺にいる内輪だけに理解できることを描いたものは、だめですよ。

急に物語を描くなんて無理だよ、物語の描き方が分からないよ、という方もいるかもしれませんね。そういうひとは、他のマンガを読んで、そのやり方をマネしてみましょう。毎年この課題では、『ちびまる子ちゃん』や『東京都北区赤羽』などの作品を例として挙げています。そういう「作者自身のことを描いた」とおぼしき漫画を「描き手の立場になって」じっくり観察し、マネすればいいのです。もちろん、ひらめき☆マンガ教室の過去の受講生の課題作品を参考にしてもいいかもしれません。


さて。以上が課題文です。が、最後に、これから1年間、すべての課題で共通して意識していただきたい、大事なヒントを出します!

①まず上記の課題文に書かれていることを何度も読みましょう。そして、「何をやることを要求されているのか」を、文章からつかみましょう。これが超重要です!

②16ページ以内というページの短さに慣れましょう。16ページというのは、意外と短いです。たぶん、1つか2つ、メインのエピソードを描くだけで、あっという間に終わってしまいます。いきなり気負って、壮大なエピソードやあなたの言いたいことをぎちぎちに詰め込んだマンガを描こうとすると、かえって、読む人には伝わらなくなってしまいます。「一番いいたいこと」「この話に絶対に必要な要素」だけを描くようにしてみてください。

③上とは逆に、16ページ以内というページ数の「多さ」にも注意した方がいいです。大事なのは、「これをペン入れしたときに、自分は締め切りまでに完成させられる」というネームを描くことです。あなたの思っている絵は、どのくらい細密ですか?その絵で、16ページのペン入れができるでしょうか?できないなら、無理して16ページ描く必要はないです。8ページだっていいし、4ページだっていい。

④「ネーム」とか言われても描き方がわからない、というひとは、コマ割りと、構図と、誰がどんなポーズや表情をして、何を言っているか分かる程度の絵を描いてみましょう。ただし、全ページ棒人間とかにしちゃうと、皆さんがどんな絵を描くのか、全く伝わりません。ネームというのは、これから作る作品の設計図として、仕事の相手(編集者)などにも見てもらうものです。読む相手が「自分の絵柄を知らない人」だということも考慮して、ちゃんと完成形の絵柄がわかるページや構図を、1ページくらいは入れることをオススメします。あっ、1ページだけマジの下描きやペン入れをしなさいってことじゃないですよ。要は「読んだ人が分かるようにする」ということです。

⑤タイトルと作者名を入れましょう。これがたとえインターネット上に無料公開するマンガだとしても、それが「あなた」の描いたものだと分かってもらったほうがいいと思います。なので、どこかに自分の名前を添えておくべきです。また、これがちょっと遊びで描いたものではなく、「作品」なのだと思ってもらうには、タイトルも入れておいたほうがいいですよ。

⑥アピール文をしっかり書きましょう。あなたがどういうふうに課題文を理解して、なぜそのような作品を描くにいたったかを、説明する文章を書いてください。別に、その理解が間違ってたっていいんです。大事なのは「自分はこう考えたのでこうしてみたんです」ということを講師(や、仕事相手)にちゃんと伝えられるようにすることです。

⑦絶対に完成させて、提出してください!みんな、誰もが、失敗したり、うまくできなかったり、会心の出来だと思ってもあんまりピンときてもらえなかったりします。でもこれは「教室」の「課題」なのですから、当たり前です。その経験を経て、次の課題で修正し、より精度を上げていく、という繰り返しをこれから1年間やっていくのです。だから失敗を恐れてはいけません。とにかく曲がりなりにも完成させることが大事です。

…というわけで、けっこう長い文章になってしまいましたが、一通りご理解いただけましたでしょうか。まだわからない!というひとがもしいましたら、あらゆる手段でご質問いただいてもOKです。わからないなあと思いながら描いて提出しちゃうくらいなら、先に聞いてしまいましょう。

それでは、よろしくお願いします。

(さやわか)

 
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米代恭 Kyou Yoneshiro

1991年生まれ、東京都出身。美大在学中に描いた漫画がアフタヌーン四季賞で佳作受賞。大学を中退し、2012年に受賞作『いつかのあの子』で短編デビュー。同年、『おとこのことおんなのこ』で長編デビュー。2015年から2018年まで、SFと不倫をテーマにした『あげくの果てのカノン』を「月刊!スピリッツ」で連載。2020年から2023年まで、『往生際の意味を知れ!』を「週刊スピリッツ」で連載。

さやわか Sayawaka

1974年生まれ。ライター、物語評論家、マンガ原作者。〈ゲンロン ひらめき☆マンガ教室〉主任講師。著書に『僕たちのゲーム史』、『文学の読み方』(いずれも星海社新書)、『キャラの思考法』、『世界を物語として生きるために』(いずれも青土社)、『名探偵コナンと平成』(コア新書)、『ゲーム雑誌ガイドブック』(三才ブックス)など。編著に『マンガ家になる!』(ゲンロン、西島大介との共編)、マンガ原作に『キューティーミューティー』、『永守くんが一途すぎて困る。』(いずれもLINEコミックス、作画・ふみふみこ)がある。「コミックブリッジ」で『ヘルマンさんかく語りき』(作画:倉田三ノ路)を連載中。

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放送開始
2020/09/06 13:00
タイムシフト視聴終了
2020/09/13 23:59