『異常論文』から考える批評の可能性──SF作家、哲学と遭遇する

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SF作家の小川哲さんと樋口恭介さん、批評家・作家の東浩紀によるトークイベントを配信します。樋口さんが編著をつとめた『異常論文』(ハヤカワ文庫JA)の刊行記念イベントです。

ゲンロンαにイベントのレポート記事を掲載しています。ぜひお読みください。
記事URL= https://www.genron-alpha.com/article20220125_01/

 

【樋口恭介さんからのイベント紹介】

異常論文とは言うまでもなく小説であって論文ではありません。

しかし、もちろんそれを単に普通の小説と呼ぶこともできません。論文も小説も制度的なものであって、そこには明示的にも暗黙的にもいくつかのルールがあり、それらのルールから外れるものは、論文であるとも小説であるとも見なされにくい傾向があります。

けれど私はそういうものに魅力を感じていた。だから居場所を与えたかった。本来小説と呼ばれるべきそれに、小説としての居場所がないなら、別の名前を与えることで居場所を作ってあげる必要があると思った。そうして私は、気づくと「異常論文」という独自の言葉を使うようになっていました。

しかし、実を言えば、こうした異常論文の性質に近いものはすでに存在しており、それには「論文」でもなければ「小説」でもない、別の名前が与えられています。それは「批評」と呼ばれるものです。

批評は論文に近いものと見なされることが多いようにも思えますが、似て非なるものであって、実のところかなり自由なものだと理解しています。小林秀雄や福田恆存などは日本文学史上代表的な批評家とされていますが、実際読んでみるとわかるとおり、引用や注や論拠が一切なく、思い出話や風景描写に紙幅を割き、かなり主観に依存した主張が展開されるテキストが少なくありません。それはどう見ても論文ではありません。しかし小説と呼ばれることもありません。それはなぜかと言うと、どこかで必ず明示的に現実と接続されており、現実の何かを分析し、現実の何かに対して自らのスタンスを表明する、メタなテキストだからだと思います。

つまり、批評というのは、そのような、領域横断的で、優柔不断で、野蛮で、ねじれた性質をもった散文=言説の空間なのです。そして私はそのような仕方で、しかし同時に、「批評家」ではなく「SF作家」として現実をとらえており、そのような私と現実の関係から、異常論文は生まれました。

さて。前置きが長くなりましたが、あまり背景ばかりを多く語っていてもみなさんも飽きてしまうでしょうから、唐突ながら、ここでいきなり本題を言いきってしまおうと思います。

「私にとって、私が作った異常論文という概念の源流は、東浩紀にある」

理由についてはイベント本番で語られることになるでしょう。
――いえ、しかし、もしかしたら語られないかもしれません。これらの背景は私たちが集まるための単なるきっかけにすぎず、当日はまったく異なる話題が展開していく可能性が否めません。

なぜならこのイベントでは、『異常論文』に「SF作家の倒し方」という、あまりに自由すぎるテキストを寄せた小川哲氏も登壇する予定となっており、私たち三人の会話がどのように始まりどのような道筋を辿りどのような結末を迎えるのかなど、当事者である私たちを含め、誰にも予測しようがないのですから――。(樋口恭介)

※ 放送のみ(会場は無観客)のイベントです。

 

201612
樋口恭介編「異常論文」(ハヤカワ文庫JA)

小川哲 Satoshi Ogawa

1986年千葉県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程退学。2015年に第3回ハヤカワSFコンテスト〈大賞〉を『ユートロニカのこちら側』で受賞し、デビューを果たす。その後のおもな著作に、『ゲームの王国』(ハヤカワ文庫JA、第38回日本SF大賞、第31回山本周五郎賞受賞)、『嘘と正典』(ハヤカワ文庫JA)、『地図と拳』(集英社、第168回直木賞、第13回山田風太郎賞受賞)、『君のクイズ』(朝日新聞出版)、『君が手にするはずだった黄金について』(新潮社)など。

樋口恭介 Kyosuke Higuchi

SF作家。会社員。2017年、『構造素子』(早川書房)で第5回ハヤカワSFコンテスト大賞を受賞し作家デビュー。外資系コンサルティングファームに勤務する傍ら、スタートアップ企業 Anon Inc. にて CSFO(Chief Sci-Fi Officer)を務め、多くのSFプロトタイピング案件を手掛けている。2021年、SFプロトタイピングの活動をまとめたビジネス書『未来は予測するものではなく創造するものである』(筑摩書房)で、第4回八重洲本大賞を受賞。その他の著書に評論集『すべて名もなき未来』(晶文社)。『異常論文』(早川書房)は初の編著となる。

東浩紀 Hiroki Azuma

1971年東京生まれ。批評家・作家。東京大学大学院博士課程修了。博士(学術)。株式会社ゲンロン創業者。著書に『存在論的、郵便的』(第21回サントリー学芸賞)、『動物化するポストモダン』、『クォンタム・ファミリーズ』(第23回三島由紀夫賞)、『一般意志2.0』、『弱いつながり』(紀伊國屋じんぶん大賞2015)、『観光客の哲学』(第71回毎日出版文化賞)、『ゲンロン戦記』、『訂正可能性の哲学』など。

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