独立国論#1失敗した人工国家満州国の理想とカルチャー──ひょっこりひょうたん島からジオン公国まで、去来する満州の影

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【イベント概要】

速水健朗です。一昨年の「バブル論」昨年の「フード左翼論」に続いて、今年の秋もゲンロンスクールで、全3回の講義を開講します。ちなみに僕が講義をする「スクール」は、このゲンロンカフェのみ。貴重な機会として毎度気合いを入れてやっております。

3年目となる今年は、今後、本にしようとしているテーマを先取りしてやります。テーマは、「独立国」について。

誰しも子ども時代に、裏山のような場所に仲間だけが知る「秘密基地」を建設する遊びに夢中になったことがあるはず。誰からも自由を侵されない、自分たちだけの場所。「独立国論」とは、このような妄想の秘密基地ごっこの延長線上として考えるモノです。
井上ひさし『吉里吉里人』は、宮城と岩手の県境近くの小さな町が日本から独立を果たす話でした。ドタバタコメディ小説とはいえ、吉里吉里国が、軍備と資源と国語と通貨を備えるなど、「独立の条件」をつぶさに描いたことで多くの人の心を捉えました。
実際、この刊行から数年語、日本の各地には、これをパロディとしてなぞらえた「ミニ独立国」が現れます。これらはあくまで「町おこし」であり、真の地域アイデンティティの高まりとそこから生まれた独立願望などというものとは、別モノではありますが、日本人の中にもある種の「自主独立」への願望が隠されていることの証左のようにも思えます。
かつて、戦国時代の加賀では、一向一揆により生まれた「独立国」がありました。農民たちが武士社会に反旗を翻して誕生した「百姓たちの国」は織田信長に滅ぼされるまで約100年存続しました。戦国時代に突如現れた共和国、またはコミューン。僕はこの出来事に心を惹かれます。また、戊辰戦争末期には、函館五稜郭にこの戦争の敗北者たち、つまり旧幕府側の残存勢力が集まり、3か月間だけ独立国「蝦夷共和国」が存在したという史実もあります。この「独立国」では、総裁選も行われ、榎本武揚がその座についたというエピソードもありました。こうした話にも、心を惹かれます。
これらは、ある種の人がパリコミューンを市民による自主管理といった理想的な政治体制として褒めそやすようなことと似ていますが、ちょっと違います。日本は、民族、言語、文化において多様性が極端に少ない国。海に囲まれた島国のため国境線もほぼ安定した変化に乏しい国。また、こうした環境的要因以上に、同一性が強く、同調圧力を生みやすい国民性は、「自主独立」をよしとせず「依存」に流れる国民性も持ち合わせています。
こうした「強固な日本」だからこそ日本人は、すべてをひっくり返す「ビッグ・チェンジ」に心を惹かれる側面を持ちます。僕の独立国論は、こんな日本でそこからの独立という試みについての考察です。
独立論シリーズの講義第1回は、満州国とは何か? に迫ってみようと思います。
日本が、西洋のブロック経済に対抗しようとしてつくった人工の傀儡国家、「五族協和」の理想に沿って作り損なったユートピア、日本が日本の外につくりあげようとしてもうひとつの独立国としての日本。それが満州国です。国策として鉄道と映画をもって運営しようとした国としても語れるし、後藤新平による壮大な首都計画としての語りがいもあります。
そして、こうした「失敗した理想の独立国」というイメージは、戦後の文化にもいろいろと姿を変えて登場してきます。前出の『吉里吉里人』を書いた井上ひさしは『ひょっこりひょうたん島』の原作者でもありますが、『偽満州国論』の著者である武田徹は「ひょっこりひょうたん島は満州国の特徴の一部を誇張したカリカチュアたり得ている」と両者の類似を指摘しています。これ以外にも、多くの日本の小説や映画などに「満州」は登場するのです。

僕がやる講義なので、ど真ん中ストレートの満州国論ではありません。外角高め、暴投気味の満州国論になると思います。なぜ僕が今、「独立国論」に興味を持っているかについても、この回で多くを語るつもりです。お楽しみに!

 

【イベント後記】


 

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速水健朗 Kenro Hayamizu

フリーランス編集者・ライター。1973年生。主な分野は、文化全般、本や都市、メディア史など。近著『1973年に生まれて 団塊ジュニア世代の半世紀』ほか、『ケータイ小説的。——“再ヤンキー化”時代の少女たち』(原書房)、『ラーメンと愛国』(講談社現代新書)、『1995年』(ちくま新書)、『フード左翼とフード右翼』(朝日新書)、『東京β』(筑摩書房)、『東京どこに住む?』(朝日新書)など。
ポッドキャスト「これはニュースではない」配信中。

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2016/02/04 00:00
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放送開始
2015/09/17 19:00
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