ゲンロン ひらめき☆マンガ教室#5物語

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【ネーム課題】

悲劇~『この夏一番の泣ける話』ではなく~

今回「物語」というテーマを頂き、改めて漫画家としての僕にとって「物語」とはなんだろうと考えてみました。そもそも、漫画家が漫画を描きたいと思うきっかけ、漫画にしたいと思うものってなんでしょう?

最初期には、他の作家の作品を読んだり観たりして「自分もこういうのが描きたい!」という素朴な真似心から湧いてくる漠然としたものかもしれませんが、次の段階ではきっと、自分の胸の中にある、ある種の、えも言われぬ感情、表現欲求、これを漫画にしたいと思うものではないでしょうか。

しかし、漫画って本当に手間のかかる面倒な作業です。そこまでして表現したい感情ってどんなものでしょう?

それは、両親にはもちろん、友人にすら、言葉で話してもなかなか伝わらないような、ややこしい感情ではないでしょうか。数字で例えると、「1でもなく2でもなく、1.2でも1.3でもない、1.2573…」みたいな。
これを中途半端に話すと、「ああ、1.3でしょ」とか「1.2の話ね、わかるわかる」と軽く見積もられて、いい加減に同情されてしまったり、批判されてしまったり…。
「そうじゃねえんだよ。そういうんじゃねえんだよ」
余計に鬱屈がたまってしまったりします。

そういうややこしい感情を、わかりやすく、誤解少なく、より多くの人に共有してもらえるようにする非常に有効な「装置」、これが【物語】=ストーリーなんじゃないかと思うんです。

それなりにややこしい感情でも、世代が近かったり、生育環境が近かったりすると、ある一定数の人には、そのまま吐きだしても「わかる」と言ってもらえるかもしれません。
しかしここはもう少し欲張って…というかむしろ、読まされる多くの読み手や、それを届ける出版社などのことを考えて、ということでもいいのですが、「メジャー」を意識して、作品にしてみましょう、という課題です。

物語化(=メジャー化)した、えも言われぬ個人的な感情、これをとりあえず「悲劇」と名付けてみました。

しかし、悲しい話でなくても構いません。読者の胸にせまるものがあれば、最終的にハッピーエンドでもいいですし、怒りや虚しさ、寂しさなどを扱っていてもいいのです。
それこそ、泣いたらいいのか笑ったらいいのかわからないような複雑な感情こそ、味わってみたい気もします。

ただ、「こういう話、泣けるよね~」というパターンで、心にもないものを手先で器用にこねてそれっぽく作ってほしくはないんですよね。そういう意味で、【「この夏一番の泣ける話」ではなく】というしばりをつけました。

でも、ほんとに涙が止まらないような短編を作ってきていただいても全然構いませんよ。作家自身の内部から出てきたものだという実感さえ伴えば、むしろそれが最高かもしれません。

メジャー(普遍)化を考えるとき、二つのことを考えると、上手くいくんじゃないかと思います。

ひとつは、違う世代や、違う性別の人の心にも届けられるための装置(演出)

もう一つは、オタク、漫画読みなど、コアな漫画ファンでなくても受け入れられる舞台設定
僕の仕事の中では、「掃除当番」「屋根の上の魔女」あたりの短編集が、参考になるかもしれません。

受講者全員が、プロ漫画家を目指すわけではないと聞いていますが、今回は一つの実験、経験として、そんな「ストーリー漫画」を作ってみましょう。

16ページという制限の中では、なかなか難しいと思いますが、どうぞよろしくお願い致します!

【実作課題】

何も起こらない

こんにちは。

突然ですが、『七色いんこ』(手塚治虫著)を読んだ事はありますか?
この作品の主人公は役者です。少年時代にある芸人に弟子入りを申し込んだ時、芸人は試しに「何もしていないところ」を演じるよう、彼に命じました。

あなたなら、どう演じますか?

この作品に出会って30年経ちましたが、今もつくづく、何もしない、何も起こらない事を表現するのはやはり難しいと感じます。
そして、そこには最もその人「らしさ」が表れるように思います。

何も起こらない、あるいは起こったとしても1年も経てば主人公達は忘れてしまうだろうな、と思う事柄を、16ページ以内で描いてみて下さい。

 

 

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ゲンロン ひらめき☆マンガ教室 – ゲンロンスクール

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西島大介 Daisuke Nishijima

1974年東京生まれ。〈ゲンロン ひらめき☆マンガ教室〉主任講師。2004年に書き下ろし長編コミック『凹村戦争』(早川書房)で漫画家デビュー。同作は平成16年度第8回文化庁メディア芸術祭審査員推薦作品となり、またこの年に星雲賞アート部門を受賞。代表作に『世界の終わりの魔法使い』(河出書房新社)『すべてがちょっとずつ優しい世界』(講談社)など。IKKI休刊により未完となった『ディエンビエンフー』が2017年1月より「月刊アクション」(双葉社)に移籍、『ディエンビエンフー TRUE END』として連載再開。1月より月刊ペースで旧I版の復刊も開始される。イラストレーター、アートディレクターとして装幀画やCDジャケットを数多く手掛け、「DJ まほうつかい」名義での音楽活動やアーティストとしての個展も開催する。

さやわか Sayawaka

1974年生まれ。ライター、物語評論家、マンガ原作者。〈ゲンロン ひらめき☆マンガ教室〉主任講師。『クイック・ジャパン』『ユリイカ』などで執筆。『AERA』『ダヴィンチ』他で連載中。『月刊ビッグガンガン』に連載中の『キューティーミューティー』の原作を担当。著書に『僕たちのゲーム史』、『一〇年代文化論』(星海社新書)、『AKB商法とは何だったのか』(大洋図書)、『キャラの思考法』(青土社)がある。近著に『文学の読み方』(星海社新書)、『文学としてのドラゴンクエスト』(コア新書)など。

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放送開始
2017/08/19 18:00
タイムシフト視聴終了
2017/08/26 18:00
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放送開始
2017/08/19 21:00
タイムシフト視聴終了
2017/08/19 23:59