「ゲンロン 大森望 SF創作講座」の授業です。担当講師は新川帆立先生と髙橋裕介先生と大森望先生です。
【スケジュール】
1限 19:00-20:00:講義
2限 20:10-22:10:梗概講評会
3限 22:20-23:20:実作講評会
【第3課題】
「売れそうなSF長編の企画書を作ってみよう」
突然の無茶振りですが、今回は皆さんに「売れそうな小説」を考えてもらいます。
小説は読者さんとのコミュニケーションです。「より多くの読者さんに受け取ってもらいやすいもの」「より多くの読者さんが受け取りたいと感じるもの」を作る技術を磨いてみよう、ということです。これは創作技法の一種なので、商業活動を行う予定がない人でも、習得しておくと便利だと思います。
売れそうと思わせてくれれば内容は何でもOKです。
キャラクターが魅力的であったり、設定が斬新であったり、世界観が魅力的だったり、テーマが現代的だったり、旬のネタを使ってみたり、人気ジャンルの最高峰を狙ってみたり……どの角度から攻めていただいても大丈夫です。SFの講座なのでSF作品がメインになると思いますが、SFではない作品も私はマイナス評価しません。
なお、以下の点に注意してください。
・企画書の形式は自由です。タイトル、三行程度の企画概要説明、主要キャラクター数名を紹介、簡単なストーリー紹介などを含むのが一般的かと思いますが、作品の全体像が分かるなら何でもOK。企画書なので箇条書きでOKです。普段の講座と同様の梗概形式でもOKです。
・「内容に関するアピール」の欄に「どうしてこの小説が売れそうだと思ったか」を書いてください。
・今回は「長編小説」(原稿用紙300枚超)の企画を考えてください。長編と短編では使う筋肉が違いますが、両方書けると創作の幅が広がって楽しいですよ。連作短編集でも可としますが、その場合は一冊の本にするだけの「まとまり」が必要となります。
・来月の実作講評では、企画した長編小説の第一章を提出してもらいます。講師陣からの講評を参考に最後まで書き切ると、とても勉強になると思います。
そして最後に一番大事な注意点!
・売れそうなものを作るからと言って、自分が書きたいもの、表現したいものを捨てないでください。編集者が提案してくる「売れそうな本の企画」の多くは安直すぎて(作家にとっては)面白くないし、たいてい失敗します。やはり作家自身が「面白い」と思って書いていけるものでなくては、良い作品にならないと思います。「俺はこれを書きたいんじゃあ!」という情熱はそのままに、どのような角度で切り出せば、あるいはどういったコーティングを施せば「売れそうなもの」になるか、考えましょう。
今回は、皆さんの企画書にダメ出しをするというよりは、どうしたらもっと「売れそうなもの」になるか、みんなで考える回にしたいと思います。「売れそうな感じを醸し出す」というのは、いわば合コンに行く前に化粧をしたり身だしなみを整えたりする「おめかし」の技術にすぎません。一度覚えると便利なので、今回その技術を皆さんに伝授できたらと思って、この課題にしました。
皆さんの企画書、拝読するのが楽しみです!!!
(新川帆立)
新川帆立 Hotate Shinkawa
photo MORI Kiyoshi
1991年アメリカテキサス州ダラス生まれ、宮崎県宮崎市育ち。東京大学法学部、同法科大学院修了後、弁護士として勤務。第19回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し、2021年に『元彼の遺言状』でデビュー。
髙橋裕介
株式会社ストレートエッジ。新潮文庫nex元編集長。担当作に、河野裕『いなくなれ、群青』、知念実希人『天久鷹央の推理カルテ』、竹宮ゆゆこ『砕け散るところを見せてあげる』、宮部みゆき『ほのぼのお徒歩日記』、伊坂幸太郎『ジャイロスコープ』など。
大森望 Nozomi Ohmori
1961年高知生まれ。書評家・SF翻訳家・SFアンソロジスト。〈ゲンロン 大森望 SF創作講座〉主任講師。著書に『21世紀SF1000』、『新編・SF翻訳講座』、《文学賞メッタ斬り!》シリーズ(豊崎由美と共著)、《読むのが怖い!》シリーズ(北上次郎と共著)など。アンソロジーに《NOVA 書き下ろし日本SFコレクション》、《不思議の扉》の各シリーズのほか、『星雲賞SF短編傑作選 てのひらの宇宙』など。訳書にコニー・ウィリス『ブラックアウト』『オール・クリア』など多数。2013年には『NOVA』が第34回日本SF大賞特別賞を受賞。