ゲンロン 大森望 SF創作講座 第9期#2授業 2

「ゲンロン 大森望 SF創作講座」の授業です。担当講師は円城塔先生と伊藤靖先生と大森望先生です。

【スケジュール】

1限 19:00-20:00:講義

2限 20:10-22:10:第2課題・梗概講評会

3限 22:20-23:20:第1課題・実作講評会

【第2課題】

「梗概を書こう」

 そんなことはわかっている、と思われそうなテーマですが、この講座では繰り返し、梗概に頭をひねることになるわけです。
 結局のところ梗概とはなんなのかというのは実は、小説とはなんなのか、というのと同じくらい不思議な問題であり、特に定見はないようです。
 それでも、梗概と小説には大きく違うところがあって、梗概には「どんな大きさの話でもとりあえず入れることができ」ます。1200字の小説に大河ドラマを入れることはできませんが、梗概になら可能です。
 一般的には、梗概には段取りが入っているはずです。登場人物の具体的な造形や、固有名詞は二次的なものです(そこから発想を広げるのは無論、大切なことです)。
 何らかの段取りがあり、変換、変転があり、お話は終わる。その段階が書いてあるはずであり、特にこの頃のエンターテイメントにおいては、そうした作り込みが主流となりつつあります。
「どのようにして終わるのか」までを考えて効果的な配置を考えて下さい(続く、や、その謎とは……、にしない)。梗概の文章は小説の文章とは全く違ったものでありえます。

 とはいえ、小説はそういうものではない、という意見もあるかと思います。自分もそう思います。実際に書いていく中でわかっていくことがあり、そのようにしか書けない、という人もいるかと思います。
 しかし、(この講座において)実作の前にあるのが梗概の審査である以上、その場合でもなんらかの対策は必要でしょう。段取りを書けないのなら、段取りではないお話であることを提示する工夫をしてください。
 実作と、梗概で予定されていた段取りの齟齬は問題としません(そこを判定するのは次回の講師の方々ですが……)。

(円城塔)

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ゲンロン 大森望 SF創作講座
SF創作講座2025課題 – 超・SF作家育成サイト

円城塔 Enjoe Toh

写真提供=新潮社
1972年、札幌生まれ。研究者を経て作家。SF、純文学問わず広く活動中。主な著書に、『Self-Reference ENGINE』(文藝春秋、2014年 Philip K. Dick Award 特別賞)、『烏有此譚』(講談社、第32回野間文芸新人賞)、『道化師の蝶』(文藝春秋、第146回芥川龍之介賞)。訳書に、チャールズ・ユウ『SF的な宇宙で安全に暮らすっていうこと』(早川書房)。近作に『シャッフル航法』(河出書房新社)、『エピローグ』(早川書房)、『雨月物語』(河出書房新社、池澤夏樹個人編集日本文学全集所収)、『プロローグ』(文藝春秋)。

伊藤靖(河出書房新社) Yasushi Ito

イラスト=西島大介
1971年、富山県生まれ。1996年、河出書房新社入社。編集部所属。担当書に、中村融・山岸真編『20世紀SF』全6巻、《奇想コレクション》シリーズ、大森望責任編集《NOVA 書き下ろし日本SFコレクション》シリーズ、伊藤計劃×円城塔『屍者の帝国』、東浩紀『クリュセの魚』、谷甲州『星を創る者たち』、宮内悠介『スペース金融道』、米沢嘉博『藤子不二雄論』、平川祐弘『ダンテ『神曲』講義』、大森望『現代SF観光局』ほか。

大森望 Nozomi Ohmori

1961年高知生まれ。書評家・SF翻訳家・SFアンソロジスト。〈ゲンロン 大森望 SF創作講座〉主任講師。著書に『21世紀SF1000』、『新編・SF翻訳講座』、《文学賞メッタ斬り!》シリーズ(豊崎由美と共著)、《読むのが怖い!》シリーズ(北上次郎と共著)など。アンソロジーに《NOVA 書き下ろし日本SFコレクション》《不思議の扉》の各シリーズのほか、『星雲賞SF短編傑作選 てのひらの宇宙』など。訳書にコニー・ウィリス『ブラックアウト』『オール・クリア』など多数。2013年には『NOVA』が第34回日本SF大賞特別賞を受賞。