いかにして私はイグノーベル賞をとったか──異端の科学と批判性

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「人を笑わせ、そして考えさせる」研究に贈られるイグノーベル賞。本講座では2012年のイグノーベル受賞者、栗原一貴の奇想天外な研究世界を紹介するとともに、その背景にある研究動機、そして受賞に至った過程について議論します。

栗原氏の研究で特徴的なのは、一見便利そうと思えたり、面白そう、と思わせたりする要素を持ちながら、よくよく考えてみると人々を不安にさせたり、怒らせたりする「物議を醸す」要素を持っていることが多い点です。

たとえばお喋りな人を邪魔する「SpeechJammer」は、話し声を僅かな時間だけ遅らせて話し手に聴かせることで話しにくくさせる携帯型デバイス。「うちの奥さんに使いたい」「言論の自由は終わった」などと賛否両論。映像を極限まで高速鑑賞する「CinemaGazer」は、映像のシーンごとに異なる人間の認知可能速度の限界に着目し、過激な早送りを自動化することでインテリジェントな「早見」を実現するシステム。「長い連ドラが見られる」「映像作品の美の破壊だ」と、こちらも評価は荒れ模様。「GeofaceProject」は、顔認識技術を用いて、GoogleMapの衛星写真から「人の顔」に見える地形を自動的に探すプロジェクト。オカルト好きにはたまりません。

近年の情報技術の高度化は、もちろん私達の生活を豊かにもしますが、同時に私達がこれまで大事にしていた価値観を暴力的に覆す可能性を秘めています。
また、多少の曖昧性があるからこそ無難に成立している我々の世界の約束事の管理が、愚直かつ高速なコンピュータに代替されることにより、思いもよらない結末に至ることもあるでしょう。

栗原氏の研究は、そのような危ういバランスの上で成立している現代社会の脆弱性を、様々な先端技術の風刺的活用により遊撃的にあぶり出していると言えるかもしれません。異端の科学と批判性の世界を、ぜひお楽しみください。

栗原氏によるSpeechJammer紹介動画はこちら

栗原一貴 Kazutaka Kurihara

1978年栃木県生まれ.2007年東京大学大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻博士課程修了.PhD.日本学術振興会特別研究員(DC2)を経て同年,産業技術総合研究所に入所,現在メディアインタラクション研究グループ研究員.2007年より千葉県総合教育センター講師を兼任.2007年から2008年にかけて,東京大学大学総合教育研究センター助教および特任助教を兼任.2009年から2010年にかけて,東京大学情報学環客員研究員を兼任.2010年より総務省フューチャースクール推進事業における東日本地区全体委員会委員.2012年イグノーベル賞,第12回日本ソフトウェア科学会論文賞,WISS’11論文賞・発表賞,EC’11展示発表賞,電子情報通信学会MVE賞,およびHCI研究会貢献賞受賞.宇都宮愉快市民.

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放送開始
2015/10/01 00:00
タイムシフト視聴終了
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2015/08/01 00:00
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2015/09/30 23:59