右傾エンタメは日本を亡ぼすのか?──『文化亡国論』をめぐって

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【イベント概要】

増加する「右傾エンタメ」をどう評価すべきか。来るべき2020年、この国の文化は、政治は、どのようなものになっているのか。
4月に刊行されたばかりの対談集『文化亡国論』で、日本社会の現状を「文化」の側面から徹底的に分析した笠井潔・藤田直哉両氏をお招きし、トークイベントを開催します。

【登壇者より】

『文化亡国論』(響文社)は、現代日本の「全体」を、文化の視点から一挙に獲得しようとする、無謀とも言える本です。脱原発デモや排外主義者の街頭活動など、俄かに10年代は政治的な行動がみられるようになってきました。新しい「大衆蜂起の時代」あるいは「政治と文化」の時代と見做しうるこの現在を掴み取るために、わたくし藤田直哉は、全共闘世代の闘士であった思想家・笠井潔氏と、研究会などを通じて討議を積み重ねてきました。笠井潔さんとの対談『文化亡国論』は、この新しい時代に対する診察と処方箋を提示する、無謀とも言える意図を持った本であり、読んだ方々が「いまがどういう時代なのか」を認識するの本です。
 10年代がどういう時代なのか——それは、ゼロ年代との比較によって、明らかになると考えました。オタク論・情報社会論が、時代論・日本論の中心であった時代、東浩紀さんは、そんなゼロ年代の批評を牽引する中心的な存在でした。わたくし藤田は、ゼロアカ道場に参加させていただくなど、東氏の批評・思想の影響を公私にわたって受け、尊敬と感謝の気持ちを持ちながらも、ロスジェネ世代なのか地方出身なのか、何に由来するのかわからない違和感を抱き続けていました。
 『文化亡国論』は、東氏の思想がぼくに与えた影響と、違和感の両方を率直に言葉にしています。それは、ぼくが、ゼロ年代の思想では何が足りないと思っていたのかを明らかにしたものでもあります。しかし、単にゼロ年代批評を放棄するのではなく——東日本大震災があったからと言って、その成果が無になるわけではありません——ゼロ年代批評が論じていた事柄のある部分は、新しい時代にも続いており、「断絶」と「連続」の両方を見ないことには、10年代の現在を理解することはできないのではないかという構えをとりました。
 東さんと笠井さんは、二〇〇三年に刊行された『動物化する世界の中で——全共闘以降の日本、ポストモダン以降の批評』(集英社新書)という共著を出されています。今回、『文化亡国論』という笠井潔さんとぼく藤田直哉の共著が刊行を記念し、ゲンロンカフェさんのご厚意で、東氏と、笠井氏と、ぼくとの、鼎談を実現させていただけることになりました。一二年の時間の厚みを、感じざるを得ません。
 全共闘世代、ポストモダン世代、ロスジェネ世代、とでも括りましょうか。三者三様のバックグラウンドを持つ「批評家」の三名が、現在についてどのような洞察を行うのか。その内容は、時に重なり、時にぶつかり合うでしょう。それぞれに違う思想のポイント同士が火花を散らす展開になるのかもしれません。
 「新しい大衆蜂起」の時代に、ぼくたちはどう生きたらいいのか。三世代の力を合わせることで、きっと知恵が生み出せる。ぼくは、素朴に、そう信じています。
(藤田直哉)

 

【イベント後記】


 

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togetter

笠井潔 Kiyoshi Kasai

作家・評論家。1948年東京に生まれる。著作は『哲学者の密室』、『吸血鬼と精神分析』、『テロルの現象学』、『8・15と3・11』など多数。

藤田直哉 Naoya Fujita

1983年札幌生まれ。批評家、日本映画大学准教授。早稲田大学第一文学部卒業。東京工業大学大学院博士課程修了。博士(学術)。著書に『現代ネット政治=文化論』、『新海誠論』、『攻殻機動隊論』、『シン・ゴジラ論』、『虚構内存在──筒井康隆と〈新しい《生》の次元〉』(いずれも作品社)、『ゲームが教える世界の論点』(集英社新書)、『シン・エヴァンゲリオン論』(河出新書)、『娯楽としての炎上』(南雲堂)、『新世紀ゾンビ論』(筑摩書房)、共編著に『東日本大震災後文学論』(南雲堂)、『地域アート──美学/制度/日本』(堀之内出版)など。

東浩紀 Hiroki Azuma

1971年東京生まれ。批評家・作家。東京大学大学院博士課程修了。博士(学術)。株式会社ゲンロン創業者。著書に『存在論的、郵便的』(第21回サントリー学芸賞)、『動物化するポストモダン』、『クォンタム・ファミリーズ』(第23回三島由紀夫賞)、『一般意志2.0』、『弱いつながり』(紀伊國屋じんぶん大賞2015)、『観光客の哲学』(第71回毎日出版文化賞)、『ゲンロン戦記』、『訂正可能性の哲学』など。

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2015/10/29 00:00
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