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講評無料
〈ゲンロン 大森望 SF創作講座〉の実作講評会の模様を無料生中継します。放送開始は22:00を予定しています。
タイムシフトは公開しませんので、あらかじめご了承ください。
【実作課題】
ジャンルSFは多様です。宇宙に行ったり未来に行ったりロボットを出したりするのもよいですが、どこにも行かずロボットも異星人も未来人も出てこなくても、SFは成立します。ただ、SFがSFであるために必要な要素が、ひとつだけあります。それは「センス・オブ・ワンダー」、すなわち驚きの要素です。
そこで次回は、みなさんに、その「驚き」を世界設定というかたちでつくってほしいと思います。
次回の梗概では、現実とは異なる「変な世界」を設定し、その世界を舞台に物語を考えてみてください。一部の登場人物が特殊な能力をもっているというような設定ではなく、作中の世界全体が、現実世界とは異なる条件の世界になっており、その条件を前提にすべての登場人物のドラマが展開するような作品を求めます。ただし、その「変な世界」に生きる登場人物に現実世界の人間が接触するという物語の場合には、現実と地続きの世界設定に生きる登場人物を出してもかまいません。
参考文献に挙げたロバート・L・フォワードの『竜の卵』では、物語の(半分の)舞台は中性子星で、その設定のおかげで奇想天外なドラマが展開されます。とはいえ、設定は必ずしも「科学的」に作られている必要はありません。つまり、ハードSFである必要はありません。「変な世界」の条件がそれ自体としてきちんと整合性がとられていれば、物理的に不可能な世界設定でもかまいません。むしろ、「もし世界が…だったら」という奇想のジャンプ力に期待します。
センス・オブ・ワンダーに富んだ作品を期待します!
東浩紀から参考文献
ロバート・L・フォワード『竜の卵』
大森望から参考文献
アイザック・アシモフ「夜来たる」
池田香代子再話、C.ダグラス・ラミス対訳『世界がもし100人の村だったら』
【梗概課題】
あなたにとって『おもしろさ』とは何か。
人類が未だ見たことのない『変な世界』のヴィジョンを打ち出すことができるのは、SF作家としてはとても強い武器です。しかしSFは同時に、そのヴィジョンをエンターテインメントとして成立させて、読者=お客さんに響く物語であることを求められます。
次回の梗概では、自分にとって「これだ!」と思えるアイデアを、読者にとって効果的に響くエンタメSFとして提示できるように、物語の見せ場と見せ方を意識して組んでみてください。自分が書きたいものを、いかにドラマとして落とし込むか。伝えたい作品のテーマを最も強く届けるためには、どんな驚きや読者への揺さぶり、感動が求められるのか。困難な問いですが、それを探求してあなたにとっての「おもしろさ」を固めることができれば、物書きとしてのレベルが一段上がることは間違いありません。
一点突破のヴィジョンを、エンターテインメントの道具として機能させること。
『エンタメSF』の設計が次回の課題です。
(参考文献)
長谷敏司から参考文献
ジェイムズ・P・ホーガン『未来の二つの顔』
大森望から参考文献
宮澤伊織「神々の歩法」
塩澤快浩から参考文献
小川一水「漂った男」(『老ヴォールの惑星』収録)
【イベント後記】
当日のtweetのまとめはこちら!
冲方丁 Tow Ubukata
1977年、岐阜生まれ。早稲田大学中退。1996年、『黒い季節』(KADOKAWA)で第1回スニーカー大賞金賞を受賞し作家デビュー。2003年、『マルドゥック・スクランブル』(早川書房)で第24回日本SF大賞を受賞、ベストSF 2003国内篇第1位に輝く。2009年、初の時代小説『天地明察』(KADOKAWA)で第31回吉川英治文学新人賞、第7回本屋大賞、第4回舟橋聖一文学賞、第7回北東文芸賞を受賞。2012年、『光圀伝』(KADOKAWA)で第3回山田風太郎賞を受賞。2016年10月に『十二人の死にたい子どもたち』(文藝春秋)を刊行。最新作は2018年12月刊行の『麒麟児』(KADOKAWA)。
高塚菜月 Natsuki Takatsuka
1987年、静岡県生まれ。2010年、早川書房入社。第2編集部所属。
担当作品は五代ゆう『アバタールチューナー』、法条遥『リライト』シリーズ、野﨑まど『know』、江波光則『我もまたアルカディアにあり』、冲方丁『マルドゥック・アノニマス』など。櫛木理宇『チェインドッグ』、森晶麿〈黒猫シリーズ〉など国内ミステリも担当。
大森望 Nozomi Ohmori
1961年高知生まれ。書評家・SF翻訳家・SFアンソロジスト。〈ゲンロン 大森望 SF創作講座〉主任講師。著書に『21世紀SF1000』、『新編・SF翻訳講座』、《文学賞メッタ斬り!》シリーズ(豊崎由美と共著)、《読むのが怖い!》シリーズ(北上次郎と共著)など。アンソロジーに《NOVA 書き下ろし日本SFコレクション》、《不思議の扉》の各シリーズのほか、『星雲賞SF短編傑作選 てのひらの宇宙』など。訳書にコニー・ウィリス『ブラックアウト』『オール・クリア』など多数。2013年には『NOVA』が第34回日本SF大賞特別賞を受賞。