身体優位の時代の先へ──「平成の鬱」とその処方箋

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【イベント概要】

一度は絶望の淵(ふち)をさまよいながら、
新しい言葉を携えてここに“生還”した著者の姿こそが
「知性は死なない」ことへの意志と希望をみごとに体現している。
(斎藤環による『知性は死なない――平成の鬱をこえて』書評より)

ベストセラーとなった『中国化する日本』(2011年)で、
一躍名を馳せた歴史学者・與那覇潤(当時32歳)。
若くして頭角を現し気鋭の論客と呼ばれたが、
2014年に双極性障害(躁うつ病)を発症し、のち勤務先の大学を辞職する。

病気の体験と、平成における日本、そして世界の変動を重ねて論じた著作が、
昨年出版された『知性は死なない――平成の鬱をこえて』(2018年)だ。
まずは自身の罹患経験と精神病理学の知見を踏まえ、
「うつ」や「躁」の(俗説とは異なる)実態を丁寧に解析したうえで、
後半では反知性主義が跋扈する世界情勢をどう捉え、
いかに「あたらしい時代を生きる」すべを見つけるかを説き、
大きな反響を呼んだ。

「グローバル人材」がもてはやされ、
文系不要論が叫ばれるなか、
「知」を再生するにはどうすればよいのか。

言語的な知性に対して、身体的な実感が優先され、
ドナルド・トランプのような政治家が支持を集める現代。
身体優位の時代を超えて、
かといって戦後の左翼が陥ったような言語偏重の罠にもとらわれず、
両輪をうまく駆動させる方法とは。

長年精神科医として臨床現場に立ち続ける一方、
社会的ひきこもり』(1998年)、『心理学化する社会』(2003年)、
ヤンキー化する日本』(2014年)など数々の著作で
平成日本を分析してきた斎藤環とともに、
令和の幕開けに際して「平成の鬱」を乗り越えるための処方箋を探る。

※斎藤環さんによる『知性は死なない――平成の鬱をこえて』の書評は、
ALL REVIEWS」で公開されています。

 

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togetter

斎藤環 Tamaki Saito

1961年、岩手県生まれ。1990年、筑波大学医学専門学群環境生態学卒業。医学博士。爽風会佐々木病院精神科診療部長(1987年より勤務)を経て、2013年より筑波大学社会精神保健学教授。専門は思春期・青年期の精神病理、および病跡学。著書に『「自傷的自己愛」の精神分析』(角川新書)、『映画のまなざし転移』(青土社)など。2013年、『世界が土曜の夜の夢なら』(角川書店)で第11回角川財団学芸賞を受賞。2020年、『心を病んだらいけないの?』(與那覇潤との共著、新潮社)で第19回小林秀雄賞を受賞。

與那覇潤 Jun Yonaha

1979年生。東京大学大学院総合文化研究科で博士号取得後、2007~17年まで地方公立大学准教授。当時の専門は日本近現代史で、講義録に『中国化する日本』(文春文庫)、『日本人はなぜ存在するか』(集英社文庫)。離職後は『知性は死なない』(文春文庫)、『心を病んだらいけないの?』(斎藤環と共著、新潮社。第19回小林秀雄賞)など、自身の病気の体験も踏まえた言論活動を在野で行っている。新型コロナウイルス禍での学界の不見識に抗議して、2021年の『平成史』(文藝春秋)を最後に「歴史学者」の呼称を放棄した。近刊に『過剰可視化社会』(PHP新書)など。

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