新しく生まれる聖人たち──現代におけるキリスト教の列聖

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【イベント概要】

ノンフィクション作家の星野博美さん、ロシア宗教文化研究者の高橋沙奈美さんをお迎えし、「列聖」を考えるトークイベントを開催します。

ロシアではいま、ロシア正教が文化的アイデンティティの一翼を担っています。ソ連崩壊後、ロシア帝国最後の皇帝ニコライ二世をはじめ、ソ連時代に苦しんだ人々か「聖人」に叙され、信仰の対象になっています。聖人たちは、信仰する人々を守り、神にとりなしてくれる身近な存在です。
キリスト教の聖人は日本とも無縁ではありません。16世紀に弾圧を受けたキリシタンの宣教師や信徒が、カトリックの聖人になっています。
ドストエフスキーは『カラマーゾフの兄弟』で、修道士のゾシマ長老の聖性を扱い、『白痴』では、キリストのような限りなく善で素晴らしいひとが同時代に存在したらどうなるかを実験しています。人間が聖人になるという問題は、文学で扱われてきた問題でもあります。現代ロシアの聖人ブームを見る限り、ドストエフスキーの問題提起は普遍的なものであるように思われます。それどころか、政治的な側面を考えずにはいられません。

みんな彗星を見ていた』で、日本のキリシタンを描いた星野博美さんと、『ソヴィエト・ロシアの聖なる景観』で、ソ連時代を様々な形で生き抜いたロシア正教を論じた高橋沙奈美さんとともに、人間が聖人になることについて考えたいと思います。
(上田洋子)

▼ 高橋さん、星野さんからイベントに向けたコメントが届きました!

ソ連が解体した後、正教はロシアの文化的支柱ともてはやされてはいますが、基礎的な教理を知り、教会に定期的に通う信者はとても少ないのが現状です。礼拝で唱えられる聖句はおろか、十字の切り方さえよく知らない「信者」を受け入れてくれるのが、現代の聖人といわれています。一方で、現代ロシア正教は、ほとんど無名の聖人たちを大量に生み出しました。それが、「新致命者」と呼ばれる革命時代の殉教者たちです。

現代ロシアが生み出した聖人から、歴史認識、国際関係、社会状況などを読み解くことを試みたいと思います。
(高橋沙奈美)

1549年、イエズス会のフランシスコ・ザビエルが来日してキリスト教を伝えてから、日本には30万を超えるといわれるキリシタンが生まれました。しかし1614年に禁教令が出されてキリスト教の信仰自体が禁止されると、ほとんどの信徒が棄教するなか、一部の信徒は表向きは仏教徒を装いながら、司祭不在の250年間、信仰を守り続けました。

激しい弾圧を予測し、自分たちが消えることを知っていた司祭たちが布教にあたって重要視したものは聖人伝でした。そしてキリシタンは、聖人の生きざまを模範として信仰を保ちながら、自分もまた殉教して聖人になるかもしれない、という特異な状況に置かれていきます。

革命後のソ連で人々がどのように信仰を保ちえたのかは、かつての日本と重なる部分があるのではないでしょうか。現代でも生まれ続ける聖人は、確実に世界の動きと連動しています。聖性を軸に、聖人をめぐる政治的な動き、ツーリズム、世界遺産、ローマ教皇など、幅広い話ができたらと思います。

個人的には、かつて隠れソ連好き高校生だったので、ロシアがご専門の高橋さんと上田さんにお話を伺えることが楽しみでなりません。
(星野博美)

当日のtweetのまとめはこちら

togetter

高橋沙奈美 Sanami Takahashi

九州大学人間環境学府講師。主な専門は、第二次世界大戦後のロシア・ウクライナの正教。宗教的景観の保護、宗教文化財と博物館、聖人崇敬、正教会の国際関係、最近ではウクライナの教会独立問題など、正教会に関わる文化的事象に広く関心を持つ。著書に『ソヴィエト・ロシアの聖なる景観――社会主義体制下の宗教文化財、ツーリズム、ナショナリズム』(北海道大学出版会)、共著に『ロシア正教古儀式派の歴史と文化』(明石書店)、『ユーラシア地域大国の文化表象』(ミネルヴァ書房)など。

星野博美 Hiromi Hoshino

ノンフィクション作家、写真家。1966年、東京生まれ。香港返還前後の2年間を追った『転がる香港に苔は生えない』で第32回大宅壮一ノンフィクション賞受賞(2001年)。ルーツである外房の漁師の足跡を追った『コンニャク屋漂流記』で第2回いける本大賞(2011年)、第63回読売文学賞「紀行・随筆」賞受賞(2012年)。『みんな彗星を見ていた―私的キリシタン探訪記』では、15~16世紀の「キリシタンの時代」に生きた、ヨーロッパ出身の宣教師と日本のキリシタンの語られなかった真実を追った。他の著作は『戸越銀座でつかまえて』『島へ免許を取りに行く』『愚か者、中国をゆく』『のりたまと煙突』『銭湯の女神』『今日はヒョウ柄を着る日』など。写真集は『華南体感』『ホンコンフラワー』。読売新聞夕刊、AERA書評欄、岩波書店ホームページで連載中。生まれ故郷である五反田・戸越銀座への愛着が強く、「ゲンロンβ」で「世界は五反田から始まった」を連載中。

上田洋子 Yoko Ueda

撮影=Gottingham
1974年生まれ。ロシア文学者、ロシア語通訳・翻訳者。博士(文学)。ゲンロン代表。早稲田大学非常勤講師。著書に『チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド 思想地図β4-1』(調査・監修、ゲンロン、2013)、『瞳孔の中 クルジジャノフスキイ作品集』(共訳、松籟社、2012)、『歌舞伎と革命ロシア』(編著、森話社、2017)、『プッシー・ライオットの革命』(監修、DU BOOKS、2018)など。展示企画に「メイエルホリドの演劇と生涯:没後70年・復権55年」展(早稲田大学演劇博物館、2010)など。

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2019/12/03 18:00
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