ゲンロン カオス*ラウンジ 新芸術校 第5期#18グループ展B「摩訶神隠し」講評会──講評会2

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〈ゲンロン カオス*ラウンジ 新芸術校〉第5期、グループ展B講評会の模様を生中継します。
13:00からの講義パートはをチャンネル会員限定で放送いたします。
14:30からの講評、展示パートは無料放送いたします。
講評、展示パート第1部は五反田アトリエから展示の様子を、第2部はゲンロンカフェから講評会の様子を中継します。

 

 

【展覧会概要】

展覧会名:「摩訶神隠し」
出展作家:大島有香子 / 木谷優太 / 小林毅大 / 鈴木知史 / 田中愛理 / 繭見 / zzz
キュレーション:NIL(CL課程)、マリコム(CL課程)
デザイン:6:30
会期:2019年10月12日(土) ~ 20日(日)
※10月19日(土)は講評のため終日休廊
※10月12日(土)は台風のため終日休廊となりました。ご注意ください!
開廊時間:15:00-20:00

会場:ゲンロン カオス*ラウンジ 五反田アトリエ 〒141-0022 東京都品川区東五反田3-17-4 糟谷ビル2F
※ 展覧会の会場はゲンロン カオス*ラウンジ 五反田アトリエとなります。ゲンロンカフェでは開催されませんので、ご注意ください。
※ 講評日の10/19(土)は講評のため終日休廊とさせていただきます。ご了承ください。
※ 講評会会場への入場は、受講生のみとなっております。一般のお客様は中継にてご覧ください。

「摩訶神隠し」ステートメント

 

此処ではない何処か。
異界。他界。常世。彼岸。桃源郷。

人ではない何者か。
山人。稀人。異人。神。鬼。

日本人は古来から続く信仰の中で、それらの場所と存在に対し、時に恐怖心を抱き、時に羨望の眼差しを向けながら生きてきた。此処ではない何処か、人ではない何者かと人が遭遇した時、そこには「神隠し」の物語が生まれる。

では「神隠し」とは一体何なのか。それは「消滅」と「境界」を巡る想像力を起動するための装置である。「神隠し」では理由や説明の付かない「消滅」という現象を扱うために、自分たちの生活空間と認識不可能な空間の間に「境界」を発生させる。自殺も失踪も怪奇現象も、かつては「神隠し」を通して認識され、扱われる対象であった。

翻って現代日本に生きる我々は、「神隠し」を素朴に信じることはできない。どのような事件や事故や現象も、全ては科学的な事実に裏付けられた/られるべき現実だ。其処は此処であり、虚構は現実であり、人間こそが化け物の正体なのである。

斯くして「境界」を失った我々は、「消滅」に対しても合理的かつ形式的な理解の元で向き合うことになった。しかし、それは同時に「神隠し」にまつわる想像力を封印するとともに、「境界」を通した逃げ場を失うこと、もしくは「消滅」との付き合い方について思考停止することを意味する。

本展覧会では現代日本において失われた「神隠し」の想像力を再起動することで、いかにして「消滅」の手触りを記憶し続け、「境界」の向こう側と関係を結び直すことができるかについて考えてみたい。

そのためにはまず、本展における「消滅」と「境界」の意味について解説する必要がある。

「消滅」とは死を通して肉体が消えること、精神や関係性が変容することで自己/他者がいなくなること、人間の知覚として不可視になること。これらはそれぞれ肉体的な死、社会的な死、認識の不可能性と対応している。人は時に慰霊、治療や新しい関係性の構築、またはテクノロジーを通じて「消滅」と上手く付き合うための術を獲得してきた。

ここで注意したいのは、我々は「消滅」に耐えられない一方で、強く惹かれることもあるということだ。「神隠し」における失踪は、何処か別の世界で生きていること、あるいは逃避することへの願望や希望でもあった。我々はそのような救いが失われた世界において、行き場のない想いをカルト化させないために、「消滅」の感触に触れ、記憶し続けるための術を見付け出す必要がある。

一方で「境界」とは向こう側との関係を繋ぐ「扉」のようなものである。言い換えればこちら側と向こう側の「境界」を移動する際に「消滅」が発生する。ここで「神隠し」における類型パターンとしては、大別して以下の三つが考えられている。

1.行って帰ってくること。
2.行ったまま帰ってこないこと。
3.行った後に死者として発見されること。

本展における「境界」とは現実/夢、加害/被害、生/死、家族/疑似家族、健常/障害などを扱っている。行って帰ってきた際に災いや祝福を持ち帰ること、行ったまま帰らずに生活してしまうこと、亡くなった対象を弔ったり自らの存在の根拠に据えること。それぞれの作品は「境界」の向こう側と固有の関係を結んでおり、出口のない世界における「神隠し」の物語は、「理由を問われない避難所」へと続く「扉」を開くのである。

ここで日本現代美術における「神隠し」の系譜について考えてみたい。サブカルチャーにおいて「神隠し」を扱った作品は『千と千尋の神隠し』などが挙げられるが、日本現代美術の展覧会/作品においては飴屋法水による「バ  ング  ント」(2005年)と「 ニシ  ポイ  」(2005-2019年)を挙げることができる。これら二つの言葉を組み合わせた「バニシングポイント」は「消失点」という意味だが、西洋絵画における遠近法を通して発達してきた「消失点」の問題は、極めて一神教的な世界観を思わせる。

1995年に起きたオウム真理教による地下鉄サリン事件後、飴屋は作家活動を休止し、「バ  ング  ント」にて作家活動を再開した。行って帰ってくるという「神隠し」を思わせる身振り、「バ  ング  ント」にて自らを「箱」という「境界」に閉じ込め、「消滅」させてみせたこと、「 ニシ  ポイ  」にて自分が「なぜか、生きている」ことと父親の骨壺があること、オウム真理教に関する鮮明な記憶。これらの活動は「神隠し」の想像力における自己「消滅」/他者「消滅」、アート/カルトの「境界」を問うものであった。

行き場を失った「神隠し」の想像力は、この閉じられた世界に滞留したまま渦巻き続ける。それは何処かではなく此処に、人ではない何者かを発生させ続けている。であるならば、我々は「一時避難所」として、あるいは「理由が不明ではなく、不問になる場所」としての「神隠し」の想像力を、日本現代美術の想像力へと接続し、現代に蘇らせなければならない。

我々が作品と展覧会を通じて作り出した「消滅」と「境界」の「神隠し」。それをカルトではなくアートと呼ぶために。

 

(NIL)

 

 

【新芸術校第5期 これまでの展覧会】

グループ展A「ホンヂスイジャク」
2019年9月14日(土) ~ 22日(日)
出展作家:菊谷達史 / 平山匠 / 三浦かおり / 茂木瑶 / 山﨑千尋 / ユゥキユキ
キュレーション:海老名あつみ(CL課程)
キュレーションサポート:鴻 知佳子(CL課程)
デザイン:青息

 

 

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ゲンロン カオス*ラウンジ 新芸術校 – ゲンロンスクール

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飴屋法水 Norimizu Ameya

1979年、17才で唐十郎の「状況劇場」に参加。1983年「東京グランギニョル」結成、演出家として独立。1990年からレントゲン藝術研究所など美術の場に発表を移す。1995年より「動物堂」で動物の飼育と販売に従事しながら、1999年「日本ゼロ年」展、2005年「バ ング ント」展など。2007年、平田オリザ作「転校生」の演出で演劇に復帰。以後、FT、吾妻橋ダンスクロッシング、ポ・ナイトなどに連続参加。小説家朝吹真理子、山下澄人との共同制作や、大友良英、テニスコーツなど音楽家とのライブ共演も多数。近年の主な仕事に、展覧会「KENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭」、演劇作品「スワン666」(2018年)、小説『彼の娘』(2017年)など。戯曲『ブルーシート』(2014年)で第58回岸田國士戯曲賞を受賞。

黒瀬陽平 Yohei Kurose

1983年生まれ。美術家、美術評論家。ゲンロン カオス*ラウンジ 新芸術校主任講師。東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。博士(美術)。2010年から梅沢和木、藤城嘘らとともにアーティストグループ「カオス*ラウンジ」を結成し、展覧会やイベントなどをキュレーションしている。主なキュレーション作品に「破滅*ラウンジ」(2010年)、「キャラクラッシュ!」(2014年)、「カオス*ラウンジ新芸術祭2015『市街劇 怒りの日』」(2015年)など。「瀬戸内国際芸術祭2016」にカオス*ラウンジとして参加。著書に『情報社会の情念』(NHK出版)。

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放送開始
2019/10/19 13:00
タイムシフト視聴終了
2019/10/26 18:00
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2019/10/19 14:30
タイムシフト視聴終了
2019/10/19 18:30