ゲンロン ひらめき☆マンガ教室 第4期#3マンガで伝える──着想1

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【ネーム課題】

「あなたのど真ん中」を、「伝わる」ように16ページで!

「第1回」お疲れさまでした。
「自己紹介」というお題、枠の中で、うまく自己表現ができたでしょうか。

これから先、毎月いろいろなお題が出され、みなさんはいろいろな自分の可能性に気付き、能力を身につけていくでしょう。
そして最終課題では、1年間で積み上げたそれらの能力を駆使して、これぞという集大成の1本を描き上げることになるわけです。

それに先駆けて、この第2回では、まずお題なしで、どストレートに、あなたらしい作品を出してみてほしいのです。
もちろん、16ページという枠はありますが…。

第1回の「自己紹介」とは違って、いわば「自作紹介」というべきでしょうか。

こんなふうに想定してみて下さい。

あなたに、突然、あなたのあこがれる雑誌(あるいは媒体)の、有力編集者がいきなり担当についてしまった!

「面白かったら載せようと思っているんだよ。君の一番自信のあるジャンルの作品を思い切って出してくれる?
16ページで」
「それが評判よかったらさ、連作で毎月載せようと思うんだ。それで1冊分たまったら、短編集を出したい」
「第1短編集だからね、ある程度はコンセプトが統一されていたほうがいい。その方が読者も手に取りやすいし、
売り出しやすいからね。」
「その短編集の表題作となるようなのを1本まず初めにがつんと出してほしいんだ。」
「何作もやるわけだからね、売れようとして無理に不得意なものに挑戦したって続かないし、
とにかく自分で、一番描きやすいもの、一番描きたいと思えるものでいいんだよ。」
「ただし、本にするわけだからね、ある程度いろいろな人に伝わるものにしたい。
うちはわりと、意外かもしれないけれど、老若男女様々な読者がささえてくれているからね、
自分とは違う性別や、年齢、異なる読書趣味の人にもなるべく伝わるような、
そういう描き方を頑張って心掛けてほしい」

「つまりね、きみのど真ん中を、見知らぬ誰かの心のど真ん中に届けてほしい、とこういうわけだ」
「やってくれるよね。締め切りはひと月ないけど、いいネームを待ってるよ!」

…こんなことを言われてしまった、と。

人によっては、これはチャンス!と前のめりに乗っかっていける人もいるだろうけど、
「え~。自分はまだなにをやりたいかもよくわからないし、得意なものなんてないし…
どうしろっていうんだよ」と立ちすくむ人もいるでしょう。
しかし…これはもう、不安でも何でも、とにかくやるしかないよね。

とにかくがむしゃらにやって頂ければそれでいいのですが、いくつかは、具体的なヒントを出しておきましょう。

「やりたいもの」「(比較的)得意なもの」がわからない…という場合。
第1回の、他の生徒さんの漫画をざあっと読み直してみましょう。
自分と全然タイプの違う人の作品がたくさんあるでしょう。
それらと、自分の描けるものを比べてみれば、自分の売りが少しは見えてきます。

「いろいろな人に《伝わる》ように、って言われても…どうしたら、自分とタイプの異なる他人に伝わるのか、
あるいはどういうふうにしちゃったら伝わらないのか、さっぱり見当がつかない」
こういう方もまた、第1回の、他の生徒さんの作品を読んでみて下さい。
こうした「教室」の利点のひとつに、ふだんめったに目にできないものが見られるということがあります。
それは、「読みにくい」「伝わりにくい」未成熟な漫画を読むことができるということなんです。
なんだか意地が悪いようですが、ぶっちゃけこれを活用しない手はありません。
「このひとの漫画、このセリフを誰が言ったのか、わかりにくいな」
「この言い方だと、ぼくはこう誤解してしまったから、ああいう言い方にしてくれればよかったのに」
「このひと、ここで前振りしたつもりで話を進めたけど、読者として完全に読み飛ばしてしまっていたから、
あとで出てきたときに全然意味がわからなかったな。確かにしげしげ読み返してみると一応ちゃんと書いてあるんだけど、
これだと流されちゃうのか…。どう描いてあったら読み流さずに、印象に残っただろうか、
そういやそもそも、この時点ではこのキャラ、重要人物だと気づかなかったわ! だから流しちゃったのか。
けど、ベタに絵やセリフで説明し過ぎるのは確かにカッコ悪くて避けたいっていうのはわかるんだよね…
だけど…じゃあどうしたらいいだろう? ああ、これならギリ美学的にも許せる範囲で伝わりやすくできるかな」
「この、7ページ目の決めゴマ、絶対見開きでどーんとやるべきだったよね。けどページが足りなかったから無理なのめちゃわかる。
…けどこれって、4~6ページ目あたりのコマをもうちょっと整理してさ、4~5ページの2ページにうまく収めれば、
6~7ページで見開きがとれるんじゃないのかな」
「このひと絵もコマ割りもぱっと見めちゃくちゃうまいっぽいのに、この肝心なところが流れちゃって目が止まらないな」
「あっ、もう一度読んでみたら、ここで回想シーンに変わってたのか。全然気づかなかったから、
なんか変だなと思ったまま読み進めちゃった」
「タイトル入れろって先生言ってたのに、タイトル入れてないじゃん」

…うまくいっていない他人の作品を読むと、自分でもついやりがちなミスを、読者目線で認識することができます。
また、読者として読んでみると、いかに読者が作者の思うとおりに読んでくれないか、自分事としてよくわかります。

こうして、他の人の作品の欠点を分析した後に、自分の、今やっているネームを、なるべく自分とは違うひとになったような気持ちで
読み返してみると、欠点に気付けたりします。
また、よくあるのは、なんとな~く欠点に気付いていても、直すのは面倒なので、無意識の方に押し込んでしまって、
「なかったことにして」そのまま完成、提出する、というパターンです。
提出したものに指摘を受けると、「あ、やっぱりそう思いました? 自分もまずいと思ってたんですよね~」と言うとか…(笑)。
まあ、どうしてもそういうことってあるんですが、そのうちのいくつかだけでも、
提出前に自前で気付いて、腹をくくって直せれば、すごくいいですよね。というか実はそれが出来るようになるというのが、
漫画家として結構重要なことだったりするのです。
1年後、言われて直すことが減っていたり、言われて直すことの内容が、より高度なものにランクアップしていたりすればいいですよね。

ともかく、描きたいもの、に関しては変に遠慮したりせず、しかし同時に、それがちゃんと伝わるように一生懸命感性を研ぎ澄ませて、
これぞという1本を出してみて下さい。もちろん今の精いっぱいでいいのです。

つまり、《今》のあなたの《名刺》となるような短編を1本作ってほしいのです。
実は、第2期の時に僕が出した課題が、まさにそれでした。
これまでの文章を読んでよくわからないという方は、2018年度の僕の課題文を読んでくださると、
理解の助けになるかと思います。

2018
「『名刺』となる短編1本~『読ませる』ということ」https://school.genron.co.jp/works/manga/2018/subjects/2/

言葉を変えても、僕が欲しいものはいつも同じです。
あなたの伝えたいかけがえのないものが、ちゃんと伝わるように描かれている漫画。

笑わせたいところ、感じてほしいところで空振りしないよう、
うまく僕の(あるいは見知らぬさまざまな読者の)心をたくみに誘導して、
「面白かった」と思わせてください。

あ、あと、第1回の課題文で、さやわかさんが書かれていた各種「注意点」は今回も引き続き意識してくださいね。
あそこに書いてあったので、ここではあえて再度書かなかっただけですので!

楽しみに待っています。

もし可能でしたら、ゲンロンから発売中の「マンガ家になる!ゲンロンひらめき☆マンガ教室第1期講義録」という本を、
僕の関わった部分だけでもいいので(笑)、事前に読んでみて下さい。
書名の通り、第1期の講義内容がガッツリ載っています。課題のネームを作るのにも役に立ちますし、
なにより読んでおいて頂けると、当日の講義ではさらに深いところまで話が進められるので、より充実させることができるというわけです。
あくまで僕個人の希望ですが、よかったらよろしくお願いします。

(武富健治)

 

 

【完成稿課題】

あなたの実際に経験したことと、それに対する感情を使って物語を描いてください

毎年のことですが、ひらめき☆マンガ教室の第1回目の課題は「自己紹介」にしています。

今年も同じことをやっていただきます!

しかし、皆さんはまだ課題をこなすことに慣れていないですから、今年は、具体的に何をやったらいいのか、わかりやすくしました。

以下、説明しますね。

1回目の課題で自己紹介を描いていただく理由は、まあ、何となくわかっていただけますよね。ひらめき☆マンガ教室に集まった人々(受講生、聴講生、そして講師とスタッフたち)が、お互いのことをよく知るためです。あなたがどんな人なのか、どんな感じ方をする人なのか知るためには、あなたの経験や感情がもとになった作品を描いていただくのがいい、というわけです。

その自己紹介を、具体的には「あなたの実際に経験したことと、それに対する感情を使って物語を描く」というやり方でやってください、というのが、今回の課題です。

たぶん、そのやり方は2パターンあります。

ひとつは、あなた自身がマンガに登場するパターンです。いわゆるエッセイコミックとか体験記というものに近いですね。

もうひとつは、あなたの経験と感情をベースにしているけど、あなたではない第三者、つまりキャラクターにそれを演じさせる、というパターンです。

どちらのパターンで描くかは自由です。ただし、重要なこととして、実際にあなたが経験したことを描くにせよ、結局はそれをあなた自身とは切り離したエピソードのように描いてくれ、すなわち「物語」にしてくださいね、というのが、今回の課題です。

物語にするってことは、つまり、実際にあなたが経験したことと、全く同じでなくていいってことです。

たとえばあなたとお母さんの話を描くのであれば、あなた自身ではなくお母さんの立場で描いたっていいです。あなたが実際に行動したのと違った結末を描いたっていいのです。「あなたの経験と感情をベースにして」いるなら、SFだっていいし、時代劇だっていいです。あるいは、実際にはそんなことは思わなかったんだけど、あとでその経験を客観的に振り返ってみたら、こういうふうに思うなあ、ということをキャラクターに思わせたっていいです。

というわけで、最低限、語り手(主人公)となるキャラクターが登場し、作者自身の経験や経歴に基づいた何らかの読み物として、最後に「おわり」とエンドマークが打てるものを描いてみてください。あっ、作品を読むのはあなたのことを全く知らない人かもしれないですから、「ゲンロンが〜」とか「ひらめきが〜」とか「一年間よろしくお願いします」みたいな、あなたの身辺にいる内輪だけに理解できることを描いたものは、だめですよ。

急に物語を描くなんて無理だよ、物語の描き方が分からないよ、という方もいるかもしれませんね。そういうひとは、他のマンガを読んで、そのやり方をマネしてみましょう。毎年この課題では、『ちびまる子ちゃん』や『東京都北区赤羽』などの作品を例として挙げています。そういう「作者自身のことを描いた」とおぼしき漫画を「描き手の立場になって」じっくり観察し、マネすればいいのです。もちろん、ひらめき☆マンガ教室の過去の受講生の課題作品を参考にしてもいいかもしれません。


さて。以上が課題文です。が、最後に、これから1年間、すべての課題で共通して意識していただきたい、大事なヒントを出します!

①まず上記の課題文に書かれていることを何度も読みましょう。そして、「何をやることを要求されているのか」を、文章からつかみましょう。これが超重要です!

②16ページ以内というページの短さに慣れましょう。16ページというのは、意外と短いです。たぶん、1つか2つ、メインのエピソードを描くだけで、あっという間に終わってしまいます。いきなり気負って、壮大なエピソードやあなたの言いたいことをぎちぎちに詰め込んだマンガを描こうとすると、かえって、読む人には伝わらなくなってしまいます。「一番いいたいこと」「この話に絶対に必要な要素」だけを描くようにしてみてください。

③上とは逆に、16ページ以内というページ数の「多さ」にも注意した方がいいです。大事なのは、「これをペン入れしたときに、自分は締め切りまでに完成させられる」というネームを描くことです。あなたの思っている絵は、どのくらい細密ですか?その絵で、16ページのペン入れができるでしょうか?できないなら、無理して16ページ描く必要はないです。8ページだっていいし、4ページだっていい。

④「ネーム」とか言われても描き方がわからない、というひとは、コマ割りと、構図と、誰がどんなポーズや表情をして、何を言っているか分かる程度の絵を描いてみましょう。ただし、全ページ棒人間とかにしちゃうと、皆さんがどんな絵を描くのか、全く伝わりません。ネームというのは、これから作る作品の設計図として、仕事の相手(編集者)などにも見てもらうものです。読む相手が「自分の絵柄を知らない人」だということも考慮して、ちゃんと完成形の絵柄がわかるページや構図を、1ページくらいは入れることをオススメします。あっ、1ページだけマジの下描きやペン入れをしなさいってことじゃないですよ。要は「読んだ人が分かるようにする」ということです。

⑤タイトルと作者名を入れましょう。これがたとえインターネット上に無料公開するマンガだとしても、それが「あなた」の描いたものだと分かってもらったほうがいいと思います。なので、どこかに自分の名前を添えておくべきです。また、これがちょっと遊びで描いたものではなく、「作品」なのだと思ってもらうには、タイトルも入れておいたほうがいいですよ。

⑥アピール文をしっかり書きましょう。あなたがどういうふうに課題文を理解して、なぜそのような作品を描くにいたったかを、説明する文章を書いてください。別に、その理解が間違ってたっていいんです。大事なのは「自分はこう考えたのでこうしてみたんです」ということを講師(や、仕事相手)にちゃんと伝えられるようにすることです。

⑦絶対に完成させて、提出してください!みんな、誰もが、失敗したり、うまくできなかったり、会心の出来だと思ってもあんまりピンときてもらえなかったりします。でもこれは「教室」の「課題」なのですから、当たり前です。その経験を経て、次の課題で修正し、より精度を上げていく、という繰り返しをこれから1年間やっていくのです。だから失敗を恐れてはいけません。とにかく曲がりなりにも完成させることが大事です。

…というわけで、けっこう長い文章になってしまいましたが、一通りご理解いただけましたでしょうか。まだわからない!というひとがもしいましたら、あらゆる手段でご質問いただいてもOKです。わからないなあと思いながら描いて提出しちゃうくらいなら、先に聞いてしまいましょう。

それでは、よろしくお願いします。

(さやわか)

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さやわか Sayawaka

1974年生まれ。ライター、物語評論家、マンガ原作者。〈ゲンロン ひらめき☆マンガ教室〉主任講師。著書に『僕たちのゲーム史』、『文学の読み方』(いずれも星海社新書)、『キャラの思考法』、『世界を物語として生きるために』(いずれも青土社)、『名探偵コナンと平成』(コア新書)、『ゲーム雑誌ガイドブック』(三才ブックス)など。編著に『マンガ家になる!』(ゲンロン、西島大介との共編)、マンガ原作に『キューティーミューティー』、『永守くんが一途すぎて困る。』(いずれもLINEコミックス、作画・ふみふみこ)がある。「コミックブリッジ」で『ヘルマンさんかく語りき』(作画:倉田三ノ路)を連載中。

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放送開始
2020/10/10 13:00
タイムシフト視聴終了
2020/10/17 23:59
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2020/10/10 18:00
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2020/10/10 19:00