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【イベント概要】
ゲンロンカフェでは2021年7月、歴史学者の與那覇潤氏と近現代史研究者の辻田真佐憲氏を招き、東浩紀が聞き手となって「物語と実証の対立を超えて」と題したイベントを開催しました。
SNSやネットでは、過去の経緯を無視し、「いまここ」の正しさだけを意識した応酬が繰り返されています。そこでは右派も左派も実証(エビデンス)を振りかざしますが、いっこうに新しい物語は立ち上がってきません。そんな不毛な状況を乗り越えるためには、「新しい歴史教科書をつくる会」が生まれ、歴史修正主義と実証主義が同時に流行し、過去への視線が大きく変わった1990年代まで遡り、歴史学の語り全体を振り返る必要があるのではないか。そのような問題提起でイベントは終わりました。
このたびゲンロンカフェでは、それを受けてふたたび歴史学の今日的意義について考えるイベントを開催します。與那覇・辻田両氏に加えてお招きするのは、ベストセラー『応仁の乱』(中公新書)で知られ、去る11月にも『頼朝と義時』(講談社現代新書)を刊行したばかりの中世史家の呉座勇一氏。呉座氏は井沢元彦氏との論争や百田尚樹氏の著作『日本国紀』への批判など、実証の立場から歴史修正主義を批判する立場の研究者として知られています。
実証による歴史修正の批判は左派の立場だと思われがちです。けれども、四半世紀前には、むしろ右派こそが、「自虐史観」と呼ばれる「歴史修正」を実証で批判するという構図を強調していました。実証と修正の関係は、時代によって移り変わります。その関係をどう考えるのか。歴史を語ることの必要性と危険性とはなにか。登壇者はいずれも30代から40代で、実証主義と歴史修正主義の相克を体験し続けた世代。そんな彼らにタブーなく語っていただきます。
2021年12月現在、呉座氏は、今年春に起きたSNSでの不適切発言をめぐり所属先との係争を抱えています。それに関連し與那覇氏と辻田氏もSNSで「炎上」しています。その3人を集め鼎談を開くというだけで、ゲンロンカフェを批判する方々もいるかもしれません。けれども、上記の主題について、いまこの3人が集まって話をすることには大きな社会的な意味があると考え、開催を決定しました。偏見なくご覧ください。
(東浩紀)
呉座勇一 Yuichi Goza
1980年、東京生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(文学)。東京大学大学院人文社会系研究科研究員、東京大学大学院総合文化研究科学術研究員、国際日本文化研究センター助教などを経て、現在、信州大学特任助教。大学共同利用機関法人人間文化研究機構に対し国際日本文化研究センター准教授の地位確認を求めて訴訟提起中。日本中世史専攻。著書に『日本中世の領主一揆』(思文閣出版、2014年)、『一揆の原理』(筑摩書房、2015年)、『応仁の乱』(中央公論新社、2016年)など。共著に前川一郎編著『教養としての歴史問題』(東洋経済新報社、2020年)など。現在、網野善彦に関する論文を執筆中。
辻田真佐憲 Masanori Tsujita
1984年、大阪府生まれ。評論家・近現代史研究者。慶應義塾大学文学部卒業、同大学院文学研究科中退。政治と文化芸術の関係を主なテーマに、著述、調査、評論、レビュー、インタビューなどを幅広く手がけている。単著に『「戦前」の正体』(講談社現代新書)、『防衛省の研究』(朝日新書)、『超空気支配社会』『古関裕而の昭和史』『文部省の研究』(文春新書)、『天皇のお言葉』『大本営発表』(幻冬舎新書)、『空気の検閲』(光文社新書)、共著に『教養としての歴史問題』(東洋経済新報社)、『新プロパガンダ論』(ゲンロン)などがある。監修に『満洲帝国ビジュアル大全』(洋泉社)、『文藝春秋が見た戦争と日本人』(文藝春秋)など多数。軍事史学会正会員、日本文藝家協会会員。
與那覇潤 Jun Yonaha
1979年生。東京大学大学院総合文化研究科で博士号取得後、2007~17年まで地方公立大学准教授。当時の専門は日本近現代史で、講義録に『中国化する日本』(文春文庫)、『日本人はなぜ存在するか』(集英社文庫)。離職後は『知性は死なない』(文春文庫)、『心を病んだらいけないの?』(斎藤環と共著、新潮社。第19回小林秀雄賞)など、自身の病気の体験も踏まえた言論活動を在野で行っている。新型コロナウイルス禍での学界の不見識に抗議して、2021年の『平成史』(文藝春秋)を最後に「歴史学者」の呼称を放棄した。近刊に『過剰可視化社会』(PHP新書)、『危機のいま古典をよむ』(而立書房)など。