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【イベント概要】
平山亜佐子さんと高橋ユキさん、ふたりのノンフィクション作家をお招きし、ゲンロンの上田洋子がお話を伺います。キーワードとなるのは「うわさ」です。
昨年10月に刊行された平山亜佐子さんの『問題の女』(平凡社)は、明治末期に新聞の三面記事にしばしば登場した女性、本荘幽蘭の生涯を描いている本です。
幽蘭は女優、新聞記者、保険外交員、喫茶店やホテルのオーナー、救世軍兵士、辻占いの豆売り、講談師、尼僧、外妾など、数十の職業を転々とし、生涯で50回近く結婚したといいます。いわゆる「女傑」ですが、女性が職業を持ち自立することが可能になり始めた時代に、その可能性に人生を捧げた清々しい人物であるともいえるでしょう。頭山満や折口信夫、出口王仁三郎らとも交友があり、新聞のみならず、多くの人の日記や書簡にも登場します。ひとつの分野でなにかを達成したわけでも、文章を残したわけでもない幽蘭が現代に蘇ったのは、うわさや人々の伝聞を通してでした。
高橋ユキさんの『つけびの村』(晶文社)は、山陽地方の過疎の村で起こった連続放火殺人事件を追ったルポルタージュです。
長年にわたる裁判の傍聴を通して、さまざまな事件を追ってきた高橋さんですが、この事件ではなんども現場に通い、さまざまな人々の話を聞いて、事件の背景となる村社会の様子を解き明かしています。うわさや伝聞は、事件を生み、事件解明の手がかりとなりますが、同時に真相を隠しもします。
そんなおふたりの接点は、2007年から2009年にかけて起きた木嶋佳苗による婚活殺人事件です。おふたりにはともに、この「うわさに満ちた無職の女」についてのルポの仕事があります。イベントでは、その事件を導入としておふたりの著書を中心に話を伺い、うわさとはなにか、なぜうわさが生まれるのか、人間が生きた痕跡は社会のなかでどのように残り、どのように歪められるのか、考えてみたいと思います。
SNSで日々うわさが飛び交い、「真実」が見えなくなっているといわれるいま、さまざまなヒントを与えてくれる議論になると思います。ぜひお越しください。
高橋ユキ『つけびの村――噂が5人を殺したのか?』(晶文社)
平山亜佐子『問題の女 本荘幽蘭伝』(平凡社)
高橋ユキ Yuki Takahashi
傍聴人。フリーライター。主に週刊誌系ウェブ媒体に記事を執筆している。『つけびの村 噂が5人を殺したのか?』(晶文社)に新章を加えた『つけびの村 山口連続殺人放火事件を追う』(小学館文庫)が好評発売中。『暴走老人・犯罪劇場』(洋泉社新書)、『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』(徳間書店)、古くは『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』(新潮社)など殺人事件の取材や公判傍聴などを元にした著作多数。
平山亜佐子 Asako HIrayama
1970年兵庫県芦屋市生まれ。東京都在住。文筆家、挿話蒐集家、デザイナー。戦前文化、教科書に載らない女性の生き方の調査を得意とする。昨年、『戦前尖端語辞典』(左右社)、『問題の女 本荘幽蘭伝』(平凡社)を上梓。今年3月に『明治大正昭和 不良少女伝 莫連女と少女ギャング団』(ちくま文庫)刊行。既刊に『20世紀破天荒セレブ ありえないほど楽しい女の人生カタログ』(国書刊行会)、『明治大正昭和 不良少女伝 莫連女と少女ギャング団』(河出書房新社)。また、『純粋個人雑誌 趣味と実益』を発行。唄のユニット「2525稼業」で唄とピアニカを担当している。大学図書館勤務。
上田洋子 Yoko Ueda
撮影=Gottingham
1974年生まれ。ロシア文学者、ロシア語通訳・翻訳者。博士(文学)。ゲンロン代表。早稲田大学非常勤講師。2023年度日本ロシア文学会大賞受賞。著書に『ロシア宇宙主義』(共訳、河出書房新社、2024)、『プッシー・ライオットの革命』(監修、DU BOOKS、2018)、『歌舞伎と革命ロシア』(編著、森話社、2017)、『チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド』(調査・監修、ゲンロン、2013)、『瞳孔の中 クルジジャノフスキイ作品集』(共訳、松籟社、2012)など。展示企画に「メイエルホリドの演劇と生涯:没後70年・復権55年」展(早稲田大学演劇博物館、2010)など。