すべての道は五反田に通ず──町工場から見た戦争と戦後【『世界は五反田から始まった』刊行記念】

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【登壇者の星野博美さんより】

このたびゲンロンから『世界は五反田から始まった』を上梓した。その刊行記念イベントのタイトルは「すべての道は五反田に通ず」という。

正直言って、意味不明である。客観的に、世界が五反田から始まっているわけはなく、すべての道が五反田に通じているわけでもない。

しかし、これらにおずおずと「私の」を加えると、文章は成立する。「私の」世界は、祖父・量太郎が1916年、五反田に上京した時から始まり、「私の」世界では、すべての道やすべての鉄道は五反田に通じていた。

1916年――。海の向こうでは第一次世界大戦が継続中で、ロシアではひたひたと革命の足音が近づいていた。少し前に革命を起こしたものの、国を掌握できずに失意の日々を送る孫文は、日本に亡命。そして五反田では、第一次世界大戦をきっかけに目黒川周辺に工場が林立し始めていた。海の向こうの戦争が、五反田を生んだといってもよい。

外房の漁師の息子だった量太郎は、そんな五反田の「誕生」を目の当たりにし、自らも製造業の道に入った。五反田にお得意さんが多かったため、離れた場所に住むわけにいかなかった。そして自国が仕掛けた戦争によって軍需工場の製造ラインに組みこまれ、商売は安定した。1945年5月、焼け野原になって、すべてを失うまで。

たかが五反田でも、確実に世界と連動し、大きな物語の一部分を構成していた。ちょうど、うちの町工場で作られる小さな螺子が、大工場に吸い寄せられ、戦闘機などの大きなものを構成したように。また工場労働者の多かった五反田は、革命を目指した人々が集まり、挫折した地でもあった。

わが家には、こんな家訓がある。

「ここが焼け野原になったら、ただちに戻り、杭を打て」

その真意は何なのか。そこからどんな風景が見えるのか。
五反田を舞台に、「戦争のある日常」を考えてみたい。

また今回は、ロシアに詳しい上田洋子さんの胸をお借りし、社会主義国家の話もする予定。
私は中国とソ連に惹かれながら、対極に位置する香港へ「転向」した過去がある。1970年代、日本のポップカルチャーにおけるソ連の存在感。人民服への憧れ。日本でも西洋でも、社会主義のイメージが流行った時代があった。思想より、かっこよさを求めた自分を題材に、いまでは地に堕ちた感のある社会主義イメージの変遷を追ってみたい。

五反田を起点に、世界や時間をあちこちへ飛ぶ。それを五反田のゲンロンカフェでできることは大きな喜びです。(星野博美)


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星野博美『世界は五反田から始まった』(ゲンロン叢書011)

星野博美 Hiromi Hoshino

ノンフィクション作家、写真家。1966年、東京生まれ。香港返還前後の2年間を追った『転がる香港に苔は生えない』で第32回大宅壮一ノンフィクション賞受賞(2001年)。ルーツである外房の漁師の足跡を追った『コンニャク屋漂流記』で第2回いける本大賞(2011年)、第63回読売文学賞「紀行・随筆」賞受賞(2012年)。『みんな彗星を見ていた―私的キリシタン探訪記』では、15~16世紀の「キリシタンの時代」に生きた、ヨーロッパ出身の宣教師と日本のキリシタンの語られなかった真実を追った。他の著作は『戸越銀座でつかまえて』『島へ免許を取りに行く』『愚か者、中国をゆく』『のりたまと煙突』『銭湯の女神』『今日はヒョウ柄を着る日』など。写真集は『華南体感』『ホンコンフラワー』。読売新聞夕刊、AERA書評欄、岩波書店ホームページで連載中。

上田洋子 Yoko Ueda

撮影=Gottingham
1974年生まれ。ロシア文学者、ロシア語通訳・翻訳者。博士(文学)。ゲンロン代表。早稲田大学非常勤講師。著書に『チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド 思想地図β4-1』(調査・監修、ゲンロン、2013)、『瞳孔の中 クルジジャノフスキイ作品集』(共訳、松籟社、2012)、『歌舞伎と革命ロシア』(編著、森話社、2017)、『プッシー・ライオットの革命』(監修、DU BOOKS、2018)など。展示企画に「メイエルホリドの演劇と生涯:没後70年・復権55年」展(早稲田大学演劇博物館、2010)など。

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2022/07/15 19:00
公開終了
2024/01/18 23:59
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