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【梗概課題】
「雨を描いてください」
せっかく、四季があり、季節が繊細な日本に住んでいるんだもの、風景描写とならんで、天気も読者に共感してもらえるように描写できれば、それはあなたの武器になると思います。雨なんて、みんなが知っているものだから、うまく描ければ臨場感でるし、下手な描き方をすればすぐに馬脚が現れちゃうし。ですので、作品の中で、一回以上雨を描いてください。夏の夕立でも、梅雨に濡れるあじさいでも、台風大被害でも、雨であれば何でもいいです。
ただ、これだけだと課題として判りにくいので、セールスポイントも梗概の最後に書いてね。例えば、「私は情景描写に自信があるんで、とても綺麗な雨を描くつもりです」とか、「記録的な台風を書きます。スペクタル映画ばりの豪雨描いてみせます」とか、「普通の雨だけど、それに連動した登場人物の心理描写をやるつもりです、この雨がなければ描けないような心理描写を」とか。あるいは、「あんまり描写に自信がないので、そのかわり、この雨は、この作品における構成上とても重要な鍵になっています」なんて奴でもいいです。とにかく、雨のシーンが作品中で最も魅力的、ないしは、最も重要に見えるような奴をお待ちしております。(あと、季節が繊細な日本って書いたけど、別に舞台は日本である必要はありません。熱帯雨林でもいいし、地球でなくてもいいです。雨さえ、降っていれば。)(新井素子)
【実作課題】
「自分の人生をSFにしてください」
受講生のみなさん、今回は、自分の人生をSFにしてみてください。
初恋でも、友達のことでも、昨日のご飯でも、なんでもいいです。大きなネタではなく、ささいなことでだいじょうぶです。
ただ思い出をネタにしてくださいという意味ではなく、記憶に結びついた自分のなまの感情をSFにのせてください。主人公をあなた自身にしなくてもかまいません。ストーリーやSFギミックを、頭で考えたものではないドラマやなまの感情に繋げることで、SF的な見せ場を組み立ててほしいのです。梗概に縛りがないように見えるでしょうが、梗概の段階でどうなまの感情とSF要素で物語の核を組み立てるかを考えておくのは、突き詰めるほどやりがいがあるはずです。
なまなましい生と物語の関係は、現実世界ではなくSFであることで、距離をいじったり歪めたり別の角度から見たりと、操作し展開することができます。それは、自分自身と世界をより深く掘り込む、大きな手がかりになるはずです。
ぜひ、みなさんの生を、SFに加工してみせてください。(長谷敏司)
新井素子 Motoko Arai
写真提供=新潮社
1960年、東京生まれ。立教大学文学部卒。高校時代に書いた「あたしの中の…」が第1回奇想天外SF新人賞佳作に入選し、デビュー。1981年の『グリーン・レクイエム』(講談社)、1982年の『ネプチューン』で2年連続で星雲賞を受賞。1999年、『チグリスとユーフラテス』(集英社)で日本SF大賞を受賞した。『……絶句』(早川書房)、『ひとめあなたに…』(東京創元社)、『おしまいの日』(中央公論新社)、『未来へ……』(角川春樹事務所)など著書多数。
水上志郎(竹書房) Shiro Mizukami
東京都生まれ。2000年代に竹書房へ入社(明確な年は不明)。美少女フィギュア雑誌、韓流ドラマムック、華流ドラマムック、官能小説、海外ロマンス小説などの編集を経験したのち、2015年にオールディス『寄港地のない船』を皮切りに海外SF作品の刊行をスタートする。現在では国内SFも担当。国内の主な作品に大森望編〈ベストSF〉シリーズなど。変な話が好き。
大森望 Nozomi Ohmori
1961年高知生まれ。書評家・SF翻訳家・SFアンソロジスト。〈ゲンロン 大森望 SF創作講座〉主任講師。著書に『21世紀SF1000』、『新編・SF翻訳講座』、《文学賞メッタ斬り!》シリーズ(豊崎由美と共著)、《読むのが怖い!》シリーズ(北上次郎と共著)など。アンソロジーに《NOVA 書き下ろし日本SFコレクション》、《不思議の扉》の各シリーズのほか、『星雲賞SF短編傑作選 てのひらの宇宙』など。訳書にコニー・ウィリス『ブラックアウト』『オール・クリア』など多数。2013年には『NOVA』が第34回日本SF大賞特別賞を受賞。