ゲンロン カオス*ラウンジ 新芸術校 第3期 理論#1導入

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生き残れ、現代美術とともに。

現代美術はその歴史のなかで、何度かの「ターン(Turn)」を経験してきた。この数年で加速度的に深刻化した「ポリティカル・ターン」は、もはや逃れられない現実となりつつある。

国内に限って言えば、それはおそらく震災以後、着々と進行していた。出口の見えない閉塞感が社会に蔓延するなかで、人々は自ら、過度に神経症的な相互監視社会を作り上げた。そして自らあらゆる「表現」に対する無制限の「検閲」に耽っては、「炎上」という祭りを繰り返す。

90年代に流行した「PCアート」が、政治的正しさ(PC)を以て作品価値を担保しようとしていたのとは違って、「ポリティカル・ターン」以後の現代美術は、どのような内容であろうと、自動的に社会的、政治的メッセージに変換されることになる。そして、問答無用でポリティカル・コレクトネス・チェックを受けることになるのだ。

「ポリティカル・ターン」以後の表現は、まったく無害で、おそろしく退屈なものになることを宿命づけられている。しかし言うまでもなく、そのような表現は、現代美術の名に値しない。

だから現代美術は、現代の、後戻りのできない「ポリティカル・ターン」に抗して、自らのテリトリーを確保しなければならない。この冗談のような、そして悪夢のような現代から生き残るための術こそ、新芸術校という実験の場で探求されるべきものだ。

したがって、新芸術校の第3期は、より現実的で実践的、そしてシビアな競争をともなうカリキュラムにバージョンアップすることになった。

1年間のうち最初の半年は、主に講義とワークショップによって、知識とノウハウのインストールを集中的に行う。そして残りの半年で、実際に作品を制作・発表し、受講生どうしで「生き残り」をかけた競争が行われる。最終的に、成果展に出品できる受講生は、その競争で生き残った数名に絞られる。

もしかしたら、ここまで苛烈な競争原理を持ち込んだ第3期の新芸術校は、もはや「美術教育」ではないのかもしれない。しかし、既存の美術教育が、この現代から生き残る術を教えることができないのなら、私たちは変わらなければならない。

生き残れ、現代美術とともに。

黒瀬陽平

 

 

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ゲンロン カオス*ラウンジ 新芸術校 – ゲンロンスクール

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黒瀬陽平 Yohei Kurose

1983年生まれ。美術家、美術評論家。ゲンロン カオス*ラウンジ 新芸術校主任講師。東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。博士(美術)。2010年から梅沢和木、藤城嘘らとともにアーティストグループ「カオス*ラウンジ」を結成し、展覧会やイベントなどをキュレーションしている。主なキュレーション作品に「破滅*ラウンジ」(2010年)、「キャラクラッシュ!」(2014年)、「カオス*ラウンジ新芸術祭2015『市街劇 怒りの日』」(2015年)など。「瀬戸内国際芸術祭2016」にカオス*ラウンジとして参加。著書に『情報社会の情念』(NHK出版)。