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【イベント概要】
現代思想と社会学の動的な接触と媒介。それが東浩紀氏と私とで立ち上げた第Ⅰ期『思想地図』の基底的なプロジェクトの一つであった。
このプロジェクトについて私が痛感せざるをえなかった困難さについてはⅠ期『思想地図』最終巻で述べた通りであるが、本講義ではあらためて別の角度から、現代思想と社会学との関わり方について考察していくこととしたい。
主として取り上げるのは、「デリダ」「ウィトゲンシュタイン」「文化」。デリダが社会学において取り上げられる場合、通常、思想史的(ハーバーマス)、理論的(ルーマン)な文脈が多いのだが、最近邦訳のでたマイケル・リンチ『エスノメソドロジーと科学実践の社会学』は、デリダの理論的問いをある意味で愚直に引き受けつつ、それを経験的な社会記述へと展開していこうと試みている。
また、日本の社会学では、ウィトゲンシュタインは主としてクリプキ、柄谷行人の解釈を通じて受容された側面が多いが、リンチはそうしたクリプケンシュタインとは異なる(ウィトゲンシュタインとしてはオーソドックスな)ウィトゲンシュタインと社会学との関係のあり方を示唆している。
リンチの記述を導きの糸としつつ、経験的学としての社会学とデリダ、ウィトゲンシュタイン(あるいはクワイン-デイヴィッドソン)の思想との関係を、捉え返していくこととしたい。
そうした作業を踏まえ、規則の記述という論点に焦点を定めつつ「文化を社会学すること」をめぐる理論的・経験的両水準での問題について検討していくこととする。
北田暁大 Akihiro Kitada
1971年生まれ。東京大学大学院情報学環准教授。社会学、メディア論。博士(社会情報学)。
広告や映画館などのメディア史分析、社会学的な行為理論、責任論などを軸として研究を進めてきたが、近年は、再度「社会(学)にとって文化とは何か」という社会学の基礎的問題に、理論的・実証的両側面から取り組んでいる。『意味への抗い』『責任と正義』『増補・広告都市東京』『嗤う日本の「ナショナリズム」』など。
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