科学と社会のコミュニケーションを考える──STAP細胞をめぐって

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【イベント概要】

iPS細胞による最初の臨床研究が近づく2014年初、「誰でも簡単に万能細胞が作れる」という鮮烈な謳い文句で一躍注目を浴びたSTAP細胞論文。革新的な内容はもちろん、著者の「30歳女性」「割烹着を着て研究」というプロフィールにマスコミ報道は過熱した。

しかし、論文に掲載された画像の不備が疑われたことなどをきっかけに、論文の内容自体を疑う声がネットほかから上がり、共著者が「画像を取り違え」「作製は簡単ではない」と釈明する必要に迫られた。さらに3月5日には所属機関が実験手技を追加公開したが、その内容がさらなる疑問点を産んでおり、第三者による再現や、所属機関による検証報告が待たれている。

一連の騒動によって、当初の報道が期待に傾いて冷静さを欠いていたことが明らかになった。考えてみれば「誰でも簡単に万能細胞が作れる」といううますぎる話に、私たちはなぜこんなに夢中になって飛びついてしまったのだろうか。論文の筆頭著者が「割烹着リケジョ」でなかったとすれば、ここまでの騒ぎは起っていただろうか。報道はどのように事実を伝え、どのように疑惑を解消していくべきだったのだろうか。そもそも、研究がどういうプロセスで進んでいくのか、現場やその周辺はきちんと伝える努力をしていたのだろうか。

STAP細胞をめぐる科学社会学的諸問題に取り組むべく、東浩紀が幹細胞研究やその情報発信などに携わる八代嘉美を迎え、文系の視点と理系の視点を交えて徹底討論。
未来への夢を失わないために、いま科学を問い直そう。

□□□□□東浩紀から開催に向けて(twitterから転載)□□□□□

八代嘉美さんは京都大学iPS細胞研究所准教授。幹細胞生物学の専門家で著書もあり、小保方氏とも面識があるとのこと。そんな彼を迎えて、文系理系双方の接点で、今回の騒動の本質に迫る議論をします。真剣にやりますので、ぜひご来場を。ほかでは聞けない内容になると思います。

東浩紀がなんでSTAP細胞?と思うひとがいるかもしれませんが、ツイッター読者ならご存じのとおり、じつはぼくは今回の騒動に最初から深い関心を寄せていました。最初の異常な報道、直後に「ネット発」ででてきたコピペ疑惑、「リケジョ」という微妙な言葉、すべてとても興味深かったからです。

そのような社会学的な関心は、本来はSTAP細胞発見の「本質」からずれているはずです。研究者が割烹着を着ていようがなんだろうが、研究の本質にはまったく関わらないはずで、実際研究者からはそのような反発も出ていた。

けれども今回の騒動はどうも、そのような非本質的な「ネット発」の「ツッコミ」こそが本質だったという皮肉な逆転劇で終わりそうです。研究者は確かに本質をつかんでいる。外部は非本質に踊らされる。しかし非本質が見えなくなったときにこそ、ひとは真実を見誤る。——これはとても哲学的な問題です。

というわけで、ちょっと抽象的な表現になりましたが(いや、まあ具体的に書くとあまりに生々しいので・・)、16日は、研究者共同体の内/外の対立を、理系/文系、科学/社会、本質/非本質といった対立と重ねつつ、現代社会における科学の地位について科学社会学的な議論ができればと思っています。

いや、まあぶっちゃけ言えば、「STAPとかありえなくね? 割烹着着てビビアンの指輪とか怪しすぎね? とりあえずトレス検証とかしようぜ」的なノリが、なんと真実を掴み国内最高峰の研究機関に勝利を収めつつあるという、この皮肉な状況をどう捉えるかって話をしたいわけですけどね。。

ちなみに、八代さんには先月半ばに京都でお会いしており、そのときに「小保方さんの論文はなぜ説得的に見える(見えた)のか」については個人的にレクチャーをもらっています。ですから、16日には、普通になぜ彼女の論文がすばらしかった(ように見えた)のかの解説もいただく予定です。

八代嘉美 Yoshimi Yashiro

京都大学iPS細胞研究所 上廣倫理研究部門 特任准教授。
専門は幹細胞生物学、科学技術社会論。1976年愛知県名古屋市生まれ。東京大学医学系研究科病因・病理学専攻修了後、慶應義塾大学医学部総合医科学研究センター特任助教、東京女子医科大学先端生命医科学研究所特任講師、慶應義塾大学医学部幹細胞情報室特任准教授を経て、2013年より現職。

東浩紀 Hiroki Azuma

1971年東京生まれ。批評家・作家。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。株式会社ゲンロン創業者。専門は哲学、表象文化論、情報社会論。著書に『存在論的、郵便的』(1998年、第21回サントリー学芸賞 思想・歴史部門)、『動物化するポストモダン』(2001年)、『クォンタム・ファミリーズ』(2009年、第23回三島由紀夫賞)、『一般意志2.0』(2011年)、『ゲンロン0 観光客の哲学』(2017年、第71回毎日出版文化賞 人文・社会部門)、『ゆるく考える』(2019年)ほか多数。

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