ネットで
見る
-
会員限定無料
-
一般無料
〈ゲンロン カオス*ラウンジ 新芸術校〉第5期、グループ展D講評会の模様を生中継します。
放送時刻は14:30-17:30を予定しています。第1部は五反田アトリエから展示の様子を、第2部はゲンロンカフェから講評会の様子を中継します。
【展覧会概要】
展覧会名:「欲望の玉響 / 玉響の欲望」
出展作家:足立大地 / 井上暁登 / 小山昌訓 / 倉田快晴 / タケダナオユキ / 粘土板さかき
キュレーション:瀬川拓磨(CL課程) / 山浦千夏(CL課程)
キュレーションサポート : 海老名あつみ (CL課程)
デザイン:6:30
会期:2019年12月7日(土) ~ 15日(日) ※12月14日(土)は講評のため終日休廊
開廊時間:15:00-20:00
会場:ゲンロン カオス*ラウンジ 五反田アトリエ 〒141-0022 東京都品川区東五反田3-17-4 糟谷ビル2F
※ 展覧会の会場はゲンロン カオス*ラウンジ 五反田アトリエとなります。ゲンロンカフェでは開催されませんので、ご注意ください。
※ 講評日の12/14(土)は講評のため終日休廊とさせていただきます。ご了承ください。
※ 講評会会場への入場は、受講生のみとなっております。一般のお客様は中継にてご覧ください。
ステートメント
私たちは他者を取り込み生きている。他者と自分の境界はそれほど明確ではないのだ。ましてやこの情報社会では、刻一刻とすさまじい速さで他者を取り込んでいる。社会で人々がうごめいているのと同じように、自分の中でも扱いきれない他者たちがひしめき合っている。
この複雑性のなかで、私たちは何かを選び取ってはまた複雑性に引き戻される。あまりに複雑であるゆえに、ときに自分や他者に対して雑にならずにはいられない。そのようなつもりがなくても、労働し、消費する日々の積み重ねによって、何かを無視することが常習化しかねない。だが無視しようとしても齟齬はなくならず、噛み合わなさが強固になってゆく。そうして思いもよらない自己が形成されたりする。そうなってしまうことを自らの生存のためと諦めるのではなく、むしろ生存のために、他者に対して粘り強くあらねばならないのではないか。そもそも自分自身が、いくつもの他者を取り込んでいるのだから。そのような存在としての自分と社会の関わり合い。ここは、これを探る場である。
何かと何か、自分と他者、他者と自分、もしくは他者と他者。ここでの両者は世界を二つに切り分けた二項対立ではない。世界の構成要素としての固有なものたちである。それらは非対称で、両者の間に真ん中などは決められない。だが、固有なもの同士が接近することがあり、もう一方でそれらは決して完全に融合しない。その相関関係を丁寧にみることで、自分と社会が他者を含みつつ存在していくためのヒントが得られるのではないか。ねたましい他者によって自分が形作られたとしても、社会に受け入れられない欲望があったとしても、攻撃ではない形で他者に接続しようとすること。本展示の作品たちは、このような異質なもの同士の関わり合いを試行錯誤している。自らの固有性と他者への願望を抱え込んで。
(CL課程・山浦千夏)
私たちの生と欲望の相関関係は、たとえそれが時代を経るにつれ変わっていくものであっても、それが逃れられないファクターとして厳然と存在することは認め、それが作り出す領域の中で思考し、それを凌駕する作品を創造/想像しなければいけない。
私たちの、かけがえのない身体性としての、単独性としての、つまり真に個別的たる作品とそれが集まるこの空間は、上記の言説に抵抗する。生と欲望の結びつきは確かに強く、単純にそれらを引き剥がすことはできない。それは強い粘着質の成分のように生に粘りついてくる。しかしどうして、私たちの思考はこの領域の「中」でしか展開されないのだろうか。そこに留まるもののみが真のアートを創造/想像できるのだというなら、私たちはそのゲームから降りる。私たちにとっての、生存をかけたアートとの取り組みは、上記の擬似的な限界と跳躍のように図式化できるものではない。
玉響。たまゆら。玉と玉が触れ合う一瞬のうちにたてられる音。転じて「ほんのしばらくの間。わずかの間」
私たちの空間に通奏低音のように共有されるものがあれば、それはこの言葉によって集約されるだろう。私たちにとって、欲望とは生を規定するファクターではない。そうではなく、それは生にこだわり、その内と外で悶え苦しみながら進む瞬間に立ち現れて消え行くもの、そのあわいに出現する捉えきれない微かな音のような「兆し」である。この空間に現れた作品は、その相違にもかかわらず、単純な欲望の図式を離れ、丁寧に(たとえ形式としてはそう見えなくとも)「玉響に」音を響かせようとしている。これは言葉による単純な図式化ではない。自らの内から湧出するものと社会なるものとの一瞬の、しかし絶え間ない触れ合い。その瞬間を玉響と呼ぶことができるなら、この空間に集った作品はまさにその発露として現前する。
自分自身と社会を何度でもこすり合せること。イメージと出来事をこすり合わせること。自らの欲望と社会なるものの欲望をこすり合わせること。その時、激しい音を立てるのではなく、聞き取ることも危ういほんの微かな、小さな音を立てること、その所作をもって作品に相対し作り上げていくこと。それが私たちの提示するオルタナティヴである。
にじり寄るように、私たちは自らの生をかけて、玉響に音をたて、時を刻む。
(CL課程・瀬川拓磨)
【新芸術校第5期 今後の展覧会予定】
最終成果展
2020年2月29日(土) ~ 3月2日(月)
最終講評会
2020年2月29日(土)
出展作家:グループ展A~D講評会での成績上位数名
講評会審査員:岩渕貞哉、田中功起、やなぎみわ、和多利浩一、黒瀬陽平
【新芸術校第5期 これまでの展覧会】
グループ展A「ホンヂスイジャク」
2019年9月14日(土) ~ 22日(日)
出展作家:菊谷達史 / 平山匠 / 三浦かおり / 茂木瑶 / 山﨑千尋 / ユゥキユキ
キュレーション:海老名あつみ(CL課程)
キュレーションサポート:鴻 知佳子(CL課程)
デザイン:青息
グループ展B「摩訶神隠し」
2019年10月12日(土) ~ 20日(日)
出展作家:大島有香子 / 木谷優太 / 小林毅大 / 鈴木知史 / 田中愛理 / 繭見 / zzz
キュレーション:NIL(CL課程)、マリコム(CL課程)
デザイン:6:30
グループ展C「おどりじ―々々々―」
2019年11月9日(土)~ 17日(日)
出展作家:伊賀大 / 小笠原盛久 / 神尾篤史 / 小林万凜 / 藤井陸 / 三浦春雨 / 杏子 / 紋羽是定
キュレーション:須藤晴彦(CL課程) / 鴻知佳子(CL課程) / 鈴木杏奈(CL課程)
デザイン:青息
宇川直宏 Ukawa Naohiro
DOMMUNE/現在美術家。1968年生まれ。香川県/高松市出身。京都造形芸術大学情報デザイン学科教授。映像作家/グラフィックデザイナー/VJ/文筆家/そして現“在”美術家など、幅広く極めて多岐に渡る活動を行う全方位的アーティスト。既成のファインアートと大衆文化の枠組みを抹消し、現在の日本にあって最も自由な表現活動を行っている”MEDIA THERAPIST”。日本に於けるVJのオリジネイター。2001年のニューヨークPS1 MOMA「BUZZ CLUB」、ロンドン・バービカン・アートギャラリーでの「JAM展」での展示から、国内外の数多くの展覧会で作品を発表。2013~2015年度文化庁メディア芸術祭審査委員。2015年度アルスエレクトロニカ(リンツ・オーストリア)審査委員。また、1980年代末「ヤバイ」という日本語スラングを初めて肯定的な意味に変転させて使用し、著述を通じて世間一般にまで広めた人物でもある。また90年代初頭より文中においてエクスクラメーションマークの連打「!!!!!!!」を多用し、現代の日本語における「感嘆」や「強調」の表現を、SNS以前から独自的に拡張した。010年3月、突如個人で立ち上げたライブストリーミングスタジオ兼チャンネル「DOMMUNE」は、開局と同時に記録的なビューアー数を叩き出し、国内外で話題を呼び続けている。現在、宇川の職業欄は「DOMMUNE」。著書として「@DOMMUNE-FINAL MEDIAが伝授するライブストリーミングの超魔術!!!!!!!!」(河出書房新社)他。DVDに「MAD HAT LAUGHS!!!!!」(Ki/oon / SONY)他。ミュージシャンとしてはUKAWANIMATION! 名義で「ZOUNDTRACK」(avex trax)他。今年は国内外の現代美術の展覧会で精力的に作品を発表している。高松メディアアート祭では、ディレクター/キュレーター/審査委員長のなんと三役を担当。
黒瀬陽平 Yohei Kurose
1983年生まれ。美術家、美術評論家。ゲンロン カオス*ラウンジ 新芸術校主任講師。東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。博士(美術)。2010年から梅沢和木、藤城嘘らとともにアーティストグループ「カオス*ラウンジ」を結成し、展覧会やイベントなどをキュレーションしている。主なキュレーション作品に「破滅*ラウンジ」(2010年)、「キャラクラッシュ!」(2014年)、「カオス*ラウンジ新芸術祭2015『市街劇 怒りの日』」(2015年)など。「瀬戸内国際芸術祭2016」にカオス*ラウンジとして参加。著書に『情報社会の情念』(NHK出版)。